済州島(チェヂュド 제주도)方言 ミニ講座10
数か月ぶりに新しい内容をアップする。今回からは用言の話である。
朝鮮語のテキストを見ると、通常、「用言は動詞、形容詞、存在詞、指定詞の4つ」などと説明されている。
動詞は「가다/오다/먹다」など動作を表す単語、形容詞は「좋다/덥다/싸다」など状態や性質を表す単語、存在詞は存在と不在を表す「있다/없다/계시다」、指定詞は肯定や否定を表す「이다/아니다」である。
これら4分類は単語の意味もさることながら、どのようなパーツ(語尾、接尾辞)が付くのか、といった点を考慮して分類される。このような分類を「品詞」という。
済州方言も標準語と当然同じ、と思いきや、実はこれが違うのである。
伝統的な済州方言では「動詞、形容詞、指定詞」の3つしかない。以下に例を挙げる。済州方言独自の単語には標準語訳を付しておく。
@ 動詞 가다 오다 ㅍ・ㄹ다(팔다) 앚다(앉다)ㅎ・다(하다) 주다 씨다(쓰다)
A 形容詞 좋다 비싸다 헐ㅎ・다(싸다) 덥다 ㅂ・디다(가깝다)
B 指定詞 이다 아니다
では標準語の「存在詞」に当たるものはというと、済州方言では「形容詞」に分類される。
すなわち、「싯다(ある・いる)」「엇다(ない・いない)」は次のように変化(活用)する。
싯다 싯곡/시곡(있고) 시민(있으면) 신(있는/있었던) 시엉(있어서) 시라(있어라)
엇다 엇곡(없고) 엇이민(없으면) 엇인(없는/없었던) 엇엉(없어서) 엇이라(없어라)
標準語の「계시다(おられる)」に当たる単語はないので、「싯다(ある・いる)」を使う。
例 삼촌은 집에 있습니다 / 계십니다 ➝ 삼춘 집이 싯수다
なお、標準語に近い「잇다」もある。形容詞として使う人もいれば、存在詞として使う人もいる。
잇다 잇곡 잇이민 잇인(있는/있었던) 잇는(있는) 잇엉 잇이라
指定詞「이다」は次のようになる。
「母音終りの体言+우다/子音終りの体言+이우다」(標準語 입니다)
짐치우다(김치입니다) 밥이우다(밥입니다) 돌이우다(돌입니다)
「母音終りの体言+라/子音終りの体言+이라」(標準語 다/이다)
나라(나다 おれだ・あたしだ) 옷이라(옷이다) ㅁ・실이라(마을이다)
指定詞「아니다」は次のようになる。
「母音終りの体言+가 아니우다/子音終りの体言+이 아니우다」(가/이 아닙니다)
감ㅈ・가 아니우다(고구마가 아닙니다) 바당이 아니우다(바다가 아닙니다)
「母音終りの体言+가 아니라/子音終りの体言+이 아니라」(標準語 가/이 아니다)
나가 아니라(내가 아니다) ㅁ・ㄹ이 아니라(말이 아니다)
「이다」が「라/이라」に、「아니다」が「아니라」になるのは中期朝鮮語や慶尚道方言と同じである。
次回は現在形や過去形など「時制(テンス)」についてお話しする予定である。

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