今回は、済州方言の子音の特徴的な事柄についてお話しする。
・子音は標準語と同じく、破裂音/ㅂㅍㅃ ㄷㅌㄸ ㄱㅋㄲ/、摩擦音/ㅅㅆㅎ/、破擦音/ㅈㅊㅉ/、鼻音/ㅁㄴㅇ/、流音/ㄹ/である。
・単語の最後の位置(語末)に来ることのできる子音も標準語やほかの方言と同じく/ㅂㄷㄱ ㅁㄴㅇ ㄹ/の7つである。
例 ㅍ・ㅅ[ㅍ・ㄷ] (小豆、標 팥) ㅍ・ㅅ이(小豆が、標 팥이)
・漢字語では「頭音法則」が起こるため、単語の最初の位置(語頭)の/ㄹ+母音/は/ㄴ/になり、/ㄴㄹ+i,y/の場合は/ㄴㄹ/が脱落する。これも標準語と同じである。
例 로인→노인(老人) 량반→양반(両班:ヤンバン) 녀자→여ㅈ・(女子)
・固有語では/니/で始まる単語がある。これは標準語では/이/の音で現れる。
例 니(歯、しらみ 標 이)、니지리(漢字:晩照里 翰林面上明里の古名)
・標準語の/기,겨/が/지,저〜제/と発音される「硬口蓋音化」が起こる。これは慶尚方言、咸鏡方言他の方言に広く見られる現象である。
例 짐치(キムチ 古 팀ㅊ・ㅣ 標 김치) 질(道 古 긿 標 길)
저술(冬 古 겨△ㅜㄹ 標 겨울) 제우(やっと 標 겨우)
・標準語の/히,혀,효/が/시,세〜서,소/と発音される「舌摩擦音化」が起こる。これも慶尚方言、咸鏡方言、全羅方言などの方言に広く見られるものである。
例 심(力 標 힘) 세(舌 標 혀) 성님(兄さん 標 형님) 소ㅈ・(孝行者 標 효자)
・中期朝鮮語の/△(z)/は、済州方言では/ㅅ/に変化した。標準語では/母音/に変化した。
例 古 아△・(弟 済 아시 標 아우) 古 지△ㅡ면(作れば 済 짓이민 標 지으면)
・単語と単語が合わさって複合語ができる際、標準語では、後の単語の語頭子音が濃音化する場合が多いが、済州方言では激音化する場合がある。
例 물(水)+병(瓶)→ 標 물병[물뼝](水瓶)、済州 물펭
사돈(姻戚)+집(家)→ 標 사돈집[찝](婿や嫁の実家)、済州 사둔칩
・単語と単語が合わさって複合語ができる際、標準語では、後の単語の語頭子音が濃音化する場合が多いが、済州方言では有声音化する場合もある。
例 「冷汁」 標 냉(冷)+국(汁)→냉국[꾹]、済州 냉국[guk]
次回は「語末子音の複写」という済州方言特有の発音変化についてご紹介したい。

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