「TVBros」を読んでいたらライブレポートページに見たことのあるミュージシャンが出ていた。
去年の暮れ、無善寺に三上寛さんを見に行った時に対バンで出ていたやつで、MCで「三上さんに影響を受けている」と言ったわりに歌は過激を勘違いした中途半端なものばかり。とにかく自分のチラシを手渡しすることに必死で、後から入って来た客がいるとすぐさまチラシを渡していた。そして、影響を受けたという三上さんのライブの最中は一番前で落ち着きなくキョロキョロしていて、明らかに退屈しているというのが丸分かりだった。きっと、今のスタイルの三上さんには興味がないのだろう。それなのによく影響を受けているなんて言えたものだ。もしも、対バンが友川カズキだったら、「友川さんに影響を受けている」と言ったに違いない。そんな偽物臭プンプンのやつのことを「TVBros」ではユーモアを交えながら好意的に書いている。
「TVBros」はテレビ番組雑誌だけでなくサブカルチャー雑誌としての一面もある。サブカルを扱うメディアには、癖が強くて大衆の支持が得難く、そのままでは埋もれてしまうコアなものを取り上げ、それを本当に必要としている人、へたしたらそれに出会わなければ死んでしまっているような人にメディアを通して届けるという利点がある。だが、「つまらない」の一言で済ませられるのに、それにあれこれ理屈をつけ、「つまらないものをつまらないと言うのは野暮、つまらないものをあえて楽しむのが粋」みたいな、完全に勘違いした紹介をしてしまい、それを鵜呑みにする人を出てしまうという弊害もある。
自分も20代前半の頃までは雑誌に書いてあることをよく鵜呑みにしていたが、今は少し引いた所から冷静に判断するようにしている。でも、なんでもそうだけど、あまり引き過ぎると覚めた視線で分析ばかりする評論家のようになってしまい、サブカルを楽しめなくなるのでその距離感は大切にしたい。