ネットで話題になった埼玉ディスマンガ魔夜峰央「翔んで埼玉」復刻。
千葉県人としては絶対読まなければならないと思って購入して本を開いたら読んだことのある本だった。魔夜峰央のマンガは「パタリロ」以外にも何冊か買っていて全て実家に置いて来てしまったが、「翔んで埼玉」というタイトルの本は買った覚えがない。この本に収録されている「やおい君の日常的でない生活」がタイトルになった本は何となく買った覚えがあるので、多分復刻の時にタイトルを変えたのだろう。ハードカバーのエッセイを文庫で出す時にタイトルを変えて出された紛らわしさと同じ。
ちょっと損した気分になったが、久々に読んだら懐かしくておもしろかったので良しとしたい。
冒頭から怒涛のような埼玉ディス。
「つい10年ほど前までランプといろりで生活していた」
「埼玉から東京へ行くには通行手形が必要」
「埼玉狩り」
「ああいやだ! 埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」
「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県民ならそれで治る!」
「埼玉県民が人間並みのことをぬかすな! つばでもつけとけ!」
あげくの果てには埼玉にはサイタマラリヤという伝染病まであると描く始末。
ここまで思い切ってやられたら爽快でしかない。この作品を読んで本気で怒る埼玉県民はあまりいないだろう。
でも、この作品は根底で差別を否定している。これが本当にただ差別しているだけだったらディスを通り越してヘイトになっていただろうし、それでは復刻は出来なかったと思う。ただ、どうせなら差別否定のような道徳的なテーマは入れずにただただディスまくったほうが作品としてはスカッと抜けの良いものになったのではないかとも思う。
そして、埼玉ディスばかりに注目されがちだが、作品の中でさらにディスられているのが茨城。
「さわるな茨城県民、ケープがくさる!」
「いばら・・! 侮辱しないでくんろ! おら所沢の者だ!」
著者はそこまで考えて描いてはいないと思うが、こういうやり取りの中に深い差別の闇が見える。
何はともあれ、ここまでディスられていると何やら羨ましくもある。千葉県人も怒らないから誰が千葉ディスマンガを描いてくれないものか。
関西だったらディスよりもヘイトの方がいいけれど、関西人はこの手のシャレが通じないから難しいかもしれない。
