群馬県下仁田市に来た五郎さん。もちろん仕事。
街をうろつくと魅力的な街角や店が沢山。
その中にあるタンメンが売りの中華屋「一番」に魅かれ、ノレンをくぐる。でもまだ仕事前なので、「いかんいかん、まだ仕事が終わっていない」などという心の呟きが出て入るのを止めるのかと思ったら、「よし、仕事前に飯だ」と理由を付けてまさかの入店。
老夫婦と見習い青年とで切り盛りしている店。カウンターに座り、タンメンと餃子を注文。餃子は注文に応じて皮から作るという凝りよう。都内でこういうスタイルは難しいだろう。時間がゆるやかに流れる地方ならでは。
先にタンメンがやって来る。キラキラ輝いて見えた。具は、肉、キャベツ、もやし、ニンジン。
「具をそぎ落とした引き算のタンメン」
と、心で呟く五郎さん。
美味しそうに食べるその様を見ながら、「タンメンって何年も食べてないなあ」と思う。
続いて餃子がやってくる。
パリッというよりしっとりな感じ。
タレは酢多目がお勧めと言われ、その通りにする五郎さん。自分も最近はそんな感じ。酢、醤油、ラー油だったら、7:2:1の割合。
仕事前にニンニク入りの料理はどうなのだろうと思ったが、そんなこと気にせずもちもちの餃子を食べる五郎さん。
食べ終えて店を出る。隣のすき焼き屋の「コロムビア」という名前が気になるも仕事に向かう。
仕事を終えて帰る為に下仁田駅へ。
待合室の椅子に座る五郎さんの後ろの壁に貼られたポスターにさりげなくぐんまちゃん。
椅子に座布団が置かれているのが懐かしい。
帰る予定だったが、ついつい待合室で居眠りをしてしまい予定が狂う。ならばこちらで夕飯を食べて帰ろうと駅から離れで飯屋を探す。そこで「コロムビア」再登場。中に入り、お婆さん店員に案内されて広い座敷席へ。すき焼きを注文したら牛か豚かと聞かれ、少し考えて豚を選択。自分も豚を選んだだろう。豚が群馬の名物だからではなく豚肉派だからだ。
やがてすき焼きセットが運ばれてくる。
まずは店員さんお勧めで長ネギのみを焼く。甘くて美味しいという。下仁田ネギ大活躍。
後は普通にすき焼きを楽しむ。
肉や野菜を溶き卵に付けて食べる。
近くに座る家族連れ客の子供は野菜を食べたがらない。
「少年たちよ、君たちにもいつかすき焼きのしいたけの意味を知る日が来るんだ」と五郎さんは心で呟くが、自分はいい歳をして今でも分からない。キノコ類は好きではない。特にしいたけは香りがダメ。食べ物を残すのは人殺しよりも罪深いと思っているので、注文した料理に入っていても残さず食べるが、自分では買わないし料理にも使わない。昔はナスもダメだったが、今は大好き。いつか自分もしいたけが分かる時が来るのだろうか。
五郎さんは一人を寂しいとも思わずもくもくと食べ進め、最後はごはんに乗せてすき焼き丼にしてしまう。
全てたいらげ、ごちそう様をしそうになるが、鍋に残った汁を見たら終われなくなりごはんと卵を追加注文。卵かけごはんにその汁をかけてざくざくいただく。至福。そんな言葉が浮かんだ。
食べ終え、動けなくなる五郎さん。ついでに温泉にでも入っていこうかなと呟くので、東京に帰るのは夜中になったのではないか。
「一番」の見習い店員は役者かと思ったら本当にそこで働いている一般人だった。にしては演技が自然で上手かった。多分、芝居か何かやっていたのではないか。
