総勢19名が3台の車で、松江周辺のドライブ旅行。
それは、40代から90歳までの・じつに幅広い年齢の身体障害者協会の旅行だった。
松江周辺は特に珍しいわけでもなく、参加すまいかとも思ったけれど、一人で留守番するのもしゃくだし付いて行ってみた。
計画は杜撰だなと感じていたが、まさに・まさに・・・。ハプニングだらけのそれは、我が家のドライブによく似ていた。
レンタカーを借りて、運転するのもグループの仲間。本土での運転はいかがなものかと気になっていたが、そんなことよりハプニングがスリルと笑いを誘って、なかなか面白かった。
原発、県立美術館、ゴビウスと3箇所の見学だったが、一つとしてスムーズには行けなかった。
先頭車が必ず、道を間違うのだ。しかも、なかなかのスピードマン。
私たちは、2号車に乗っていた。この運転手、本土での運転は数年ぶりだという。
そして、3号車の運転手も・まったく道を知らない。「とにかく、俺にぴったり付いてござい」と走り出したのだが・・・。
1号車が松江を走るのはよく見ていた。さすがに早いが、道は知らないらしく。
「「おいおい、ここでまがらにゃいけんに、いったいどこえ行くつもりかいな」と、私たちは騒ぐ。これが我が家なら、即携帯で連絡取り合うところだけれど、運転中では携帯も使えない。
若者ならともかく、年寄りではなおのこと・それはできない。ひたすら、気付いてくれるまで走り続けるしか無いのだ。
しかも隠岐島じゃあるまいし、ルート変更は大変。いったい、あの日の走行距離はどれくらいだっただろうか??
ゴビウスでは、迷子も出たりして。いやぁ、騒ぎがいっぱいで。でもすべて終わって「あぁ・よかった!」
障害の違う人達との旅行は気疲れするけれど、今回はハプニングの連発が、救いの神だったようにも思う。
迷子のじいさまだけれど、実はそのきざしは朝のうちに見えていた。
温泉に行くと、朝風呂に入りたいのがトラトラで。その日も、じいさま二人を誘って入っていた。
介助の必要な人をさりげなく・誘う優しさを誇らしくも思っていた。
ところが、朝食を終えてエレベーターに乗ったとき、迷子のじいさまの連れ合いさんに捕まった。
「なんと、うちのじいさんは・風呂からなんぼしてももどらんけぇ、一生懸命探した輪の。あんたに捨てられて・・・」笑いながらではあったが、それは抗議に聞こえた。
部屋に入って・いきさつを聞いてみると、もう一人のじいさまが財布が見えんと騒ぎ、それを探してるうちに、迷子のじいさまは一人で大浴場まで行ったというのだ。
それでトラトラは、すっかり安心して、まだ上がってこないじいさまに声を掛けて先に帰ったらしい。
いきさつはどうあれ、責任を感じてひたすら頭を下げていたのだった。
「行けても帰れない」寂しいけれど、やがて私たちも行く道なのだろう。「財布が見えんじいさま」の財布は、きっちり腹巻の中に・・・。
二つの事件に遭遇して、複雑な気分の旅行でもあった。

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