「ハンドルをすこぉし 右に切って そのまま まっすぐ まっすぐ よぉし よぉし・・・」 私たちは 獣道に迷い込んでいた。
蜂の巣取りを断念して いよいよ密漁にと、日中を避けて 4時前だったか 出発した。
相変わらず 車に乗り込んでまでも「どっちに向かうの?」って感じで・・・!
結局 目的地は大津久(おおずく) コースは 歌木(うたぎ)をぬけると トラトラが決定を下した。6人乗りの大きな車で、何も 山道をと 思わないでも無かったが 距離的にはそっちが 近いのかとも・・・。
運転手は かっちゃん。自分の車だし 運転は 決して下手なほうでは無いが、それでも広い道に出たときは ホッとした。そして このときはまだ このかっちゃんが あのような試練に 立ち向うようになろうとは 思いもしなかった。
しばらく 都万の海岸を「わぁ きれいだぁ!」の歓声を上げながら うっとりと走っていた。
「そろそろのはずだよねぇ?」 「うんー もう少し 先じゃらぁ」 「確か 那久(なぐ)が 近かったよねぇ・・・?」
トラトラも かっちゃんも 道は よく憶えているほうだが、さすがに 10年以上もたつと そうも行かないらしい。
「あっ ここだ!」トラトラの声に 「うんうん 見覚えがあるわ・・・!」やれやれ・・・!!
ハンドルが切られて その道に進入したとき 「わぁ 獣道みたいだねぇ?」 「まぁ この辺は 年寄りしかおらんけんなぁ。」
車は 草なのか 枯れ枝なのか バキバキ 音を立てて 進んでいく。この道に入るとき 「カタクリの里」と 看板を読む 誰かの声を思い出して 不安がよぎった。
「あんたら カタクリの里って 書いてあったんなら 山に行く道なんじゃないの?」 「まぁ もうちょっと行ったら 海に出る道が 有るじゃらぁ。」
しかし 走っても走っても 海が見えるどころか 道は ますます険しくなって 対向車でもきたら 絶対絶命だった。それでも ところどころに ユーターンの出来そうな場所が 作ってあるというから 確かに 道路には違いないだろうけれど・・・?
「えぇっ? ここから先は もう行けんよぉ!」 「うん やめよう やめよう・・・!」 「こんなとこ バックしろってかぁ?!」
かっちゃんの焦り声。お母さんの悲痛な叫びに 反応したのか やごべーが カーリーにしがみついて 窓の外を見ては 泣き出す。
「よし 私が 誘導するから 頑張って!」と 次女は 車を飛び出して 後ろに 前に 走りながら 誘導し始めた。
こんな状況判断が 出来ようはずもないのに、 0歳児は 立ち上がって外を見ては またしがみつく。こんなときでも 「この子は 天才時かも・・・?」などと 馬場場かが・・・。
「大丈夫だよ お母さん 頑張ってるからね。 よしよし」半分は 自分に 言い聞かせていた。
「ハンドルを すこぉし 左に切って そのまま まっすぐ まっすぐ よぉし ストォップ!」
一つ 一つの支持に 「はい はい」と 緊張したかっちゃんが答えて 車は ゆっくり ゆっくり。その間も 草木を バキバキ ミシミシ!
どれくらい立っただろうか いよいよ ユーターン。
「ハンドルを 右に切って もう少し よし タイヤをまっすぐにして もう一回 右に切って もっと もっと・・・!よぉし OK!」
安堵のため息と 拍手が 車内に満ちた。こうして書いていても ウルッと来てしまう。
後は まっすぐ ひた走るだけ。「もう一息 かっちゃん 頑張れぇ!!」 「よぉ やったねぇ!!」 「これは ほんとのサバイバルだよぉ。ブログに かっちゃんの活躍を載せてよ!」
いやぁ これはもう 書かずにはいられない。かっちゃんの度胸と 次女の適切な誘導が無ければ どうなっていたことか??
神妙に黙り込んでいた長女は ため息混じりに 「私には 絶対無理だわ。誘導もできへん」と・・・!
やっとの思いで目的地にたどり着いたのは 5時少し前だった。
おおずくから かんなを呼び寄せて かなりの漁をした。が・アワビは 残念ながら無かった。
14日の海遊びを付き合うように お願いして 帰り着いたのは 7時ごろだっただろうか?
この日のサバイバルは 後々までも 語り続けられることでしょう。
ちなみに 大津久までの道路は きれいに整備されていて、10年前には 無かったものが出来ていた。

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