先週の火曜日、浜田市旭町に有る受刑者の施設で講演してきた。講演などとしゃれたものではなく、雑談といった方が正しいのだけれど・・・! 便宜上、講演と言わせてもらうかな。
これが、なかなかのハードスケジュールで、午前6時15分だったかな? 特急で向かい、帰りは、4時41分の特急だったような? なので、12時間拘束されたことになる。この話を簡単に引き受けてはみたものの、具体的に説明をうけると、さすがに緊張した。講演のテーマにはこだわらないが、自己紹介は、ざっくりお願いします。「こういう場所ですからねぇ。」なるほど!! 服装は、肌の露出しないもの。宝石類は、身につけないでください。それなら大丈夫。逆を言われたら困るけど・・・。私のほかにもう一人、男性のSさんも一緒だった。この人には、ジーパンと・サンダルはやめてくださいと言われたらしい。
さて、当日、私たち二人に、ライブラリーの職員が一人引率で向かった。事務所でお茶を飲みながら、簡単な説明を聞いて、会場に向かった。私物は全て預けて。変わりに、位置情報を感知する機会を首にぶら下げられて。いよいよ刑務所に入るときには、金属探知機と・薬物チェックの機会を当てられて、関所を通過。そこから長い廊下を歩き、いくつものドアを全て鍵で開け。刑務間が一人付いての入室。話には聞いていたものの、目の当たりにすると、やはり特殊な所に来たのだと・・・!
長い廊下は、270メートルも有ると言う。いったい、総面積はどれくらい有るのだろうか。さすがに、それは聞かなかった。でも、「私がウオーキングするのに良さそう」とは言ったけどね。廊下の窓は開け放されているので、山の空気が心地よいとも思った。が・部屋に入ると、なんと暑い! もちろん、エアコンは無い。それでも私たちのために、扇風機は一台ほど回してもらえた。
話は一人、50分程度。二人が話し終えたところで、15分程度、質問の時間が取ってあった。先に、男性のSさんに話してもらった。彼は中途失明で、今は0,01くらいの視力で。それでも会社復帰をしている。その間の苦悩の日々を語っていた。涙の出そうな話で。しかもきちんと整理されたいい話だった。
この施設は、男性ばかりが、1500人収容されていた。その中の音訳ボランティアと・点訳ボランティアの訓練をしている人たちが対象だった。午前中は、音訳の人50名。午後は、点訳50名。つまり、同じ事を2回しゃべらなければいけなかった。「規律 きょつけい れい 直れ 着席」と、非常にきびきびした刑務間の号令で始まったので、私も身が引き締まる思いだったのだが・・・。
あらかじめ、「無表情で、リアクションはほとんど無いですのでやりにくいと思いますが、気にしないでお話ください」と言われていた。
ご前の部も・午後の部も、最初にSさんに話してもらっていた。さすがに、彼の話には静かに聞き入ってる様子が伝わった。私はというと、まぁ・・・。見事に笑いも誘った満足かな?? でもあの人たち、減点にならないかなぁ? そんな世界らしいから・・・。質問は、たくさん出た。これには、職員も驚いていた。しかも「まるまる県から来たまるまるです。何歳です」と、しっかり名のって・・・。
私たちは、すっかり気分を良くして、午後の部は、かってに質問の時間を多く取った。主な質問は、「もし今、目が見えたら一番に見たいのは、やはり旦那さんの顔ですか?」 これには、大きくかぶりを振って、「もちろん、自分の顔ですよぉ。2番目が娘の顔。夫は、3番目ですかねぇ・・・!」大きな笑い。ほかには、町で見かけたときの声の掛け方。日常生活で、一番困ることは?などなど。質問は多かったが、今となっては記憶が薄れて思い出せない。ま・視覚障害者に投げかける一般的なものだったような気がする。中には、市役所の福祉課に勤めていた人もいて、これには驚いた。声からのいんしょうは、皆さん、とても良い人みたいなんだけどなぁ。
そういえば、「声を聞いて、その人のイメージが出来ますか?」ってのも有ったなぁ。Sさんは分からないと答えたが、いつもの私の説を語った。声から判断する美人・不美人を。「今までに二人ほど、大きく外れたことが有ったんですけどねぇ・・・。」これにもどよめき!
ここは、音訳・点訳のボランティアに携わる人たちなんだから、読書にかかわる話もしなければと、午後になって気が付いたしまつでして。しかし、私が読む本なんて、ミステリーがほとんどなので。さすがに、受刑者の前で、刑事登場の話はふさわしく無いだろうし。医学書を読んでますとも言えず。パソコンの普及によって、点訳の事情が、大きく変化した話をした。そしてそれが、私たちの生活に潤いをもたらしてくれていると・・・。
しっかし、エアコンの無い中での生活は、大変だろうなぁ。扇風機は回っていたけれど、その音に負けないように、大きな声で50分しゃべったら汗だくだった。職員が慌ててアイスノンを差し出したくらいだから、よほどの顔をしていたのだろうなぁ・・・。

0