当時の山日記(日本山岳会編)を開いてみると1962年にスベア121Lを買ったことになっている。その前からカワシマ(?)というストーブを持っていたが故障が多くて、ある時から持ち物表の中にスベアの文字が表れている。
季節が良くなってくると、ちょっとした荷物と食料を背負って野山を歩いてみたくなる。日溜まりでシートを広げてのランチが楽しみ。
こんな時、今風のガスストーブを持って行く時が多いが、昔の灯油のコンロを持って行くことがある。当時はラジュースとも呼ばれていた。その頃、ガソリン仕様のホェーブスの扱い方を間違えて一の倉沢出合でテントを燃してしまった失敗もあって灯油のストーブにした記憶がある。
ガスコンロとは違って、コックをひねればただちに火がつくことはない。
容器を開けて、組み立てて火皿に灯油を満たし、紙をちぎって捻ったモノを入れてマッチで火をつける。2or3分したら燃料コック(?)を閉めて燃料タンク内の圧力が上がるのを待つ。火皿の灯油が燃え尽きる頃、「ボォ〜」と言う音と共にノズルから赤青の火が出てくる。ここでポンピング。数回ポンピングを繰り返すと「ブォ〜ォ」とノズルから青い綺麗な火が噴出する。
日溜まりのなかで寝ころんで、この「ブォ〜ォ〜」と云う音を聴きながら、過ぎていった山の日々を想い出すことも悪いことではない。あの岩棚の上で、あの雪洞のなかで、吹雪の中で聴いたスベアの音と全く変わらない心地良い音楽だ。