愛知県庁本庁舎竣工の5年前の昭和8年(1933)、名古屋城三の丸の地に名古屋市役所の新庁舎が完成した。名古屋市庁舎は、県庁舎と同様に、昭和天皇即位の御大典事業として建設されたものである。
外観の意匠は一般公募され、一等に選ばれた平林金吾氏の案を基に、名古屋市建築課が設計を行った。中央にある高さ53mの塔には二層の屋根があり、四方睨みのシャチを載せて名古屋城との調和を図った。当時の「帝冠様式」の代表的作品である。内部の玄関ホール、階段の大理石は、国会議事堂で使われた山口県産『小桜』の余材が使用されている。この材が使用されているのは、国会議事堂と名古屋市庁舎のみである。
名古屋市は、明治22年(1889)10月1日、市制・町村制施行により発足した。当初、市内栄交差点南西角(中区栄4丁目)に市役所を設置したが、明治40年(1907)火災により焼失した。その後、明治42年(1909)中区新栄町1丁目に新築移転した。当時の愛知県庁の西南の位置であった。
名古屋市の人口は、大正9年(1920)の第一回国勢調査では429,997人であったが、5年後の大正14年(1925)には768,558人まで増加し、100万人突破も目前となった。そうした急激な人口の増加に対応すべく、新たな庁舎の建設が急務とされ、昭和3年(1928)に新庁舎建設の議案が採択されたのである。なお、新庁舎が完成した翌年の昭和9年(1934年)、名古屋市の人口は1,017,700人に達し、名実ともに100万都市となった。
設計 平林金吾、名古屋市建築課
施工 大倉土木
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造5階建て、地下1階、塔屋付

南西方向から見た名古屋市庁舎。

屋根の四方に鯱。塔の四面に時計が設置されている。

市庁舎正面。

市庁舎内廊下。

庁舎竣工記念絵はがき 外観

庁舎竣工記念絵はがき 庁舎内 市会議事堂

昨年、製作された三谷幸喜の「笑いの大学」は、名古屋市役所でロケが行われた。

市役所のどの部屋でしょうか?