国宝の茶室は、「如庵」と京都山崎の「妙喜庵待庵」、京都大徳寺龍光院内の「密庵」(みつたん)の三つである。
「如庵」の外観は、柿葺(こけらぶき)で入母屋風な端正なたたずまいを示し、躙口(にじりぐち)を正面に見せず、左端に土間庇をつくっている。土間庇の正面に2本引の腰障子を立て小部屋を設け、置刀掛を据えている。躙口に対面して正しい円でない下地窓(したじまど)をあけ、端に寄せて力竹が添えられている。袖壁にこの円窓が切られているために土間庇を広く感じさせている。
内部はほぼ四畳半の中に床を取り入れた形で、二畳半台目で、床脇に三角形の地板(鱗板・うろこいた)を敷き込んでいる。斜行する壁面ができ立体的にも特異な構えを組み立てている。この鱗板と斜行した壁面から「筋違の囲」とか「袴腰(えりこし)の数寄屋」と呼ばれ、腰張りに暦が使われ「暦張りの席」ともいう。
「如庵」のもう一つの独創性は、点前座(てまえざ)の中柱(なかばしら)を中心とする構成にある。それは向切の出隅に中柱を立て、風炉先(ふろさき)の壁面いっぱいに火灯形にえぐり抜いた板をはめ、点前座に明かりを取り入れている。有楽は、中柱を座敷の空間構成上における床に対する中心的な要素として設定することによって、このような類のない独創的な中柱の構成とした。

左「正伝院書院」、右「如庵」。

「如庵」西面。中央「蓮子窓」、右側「下地丸窓」

「如庵」南面。左側土間。

土間と躙口。

如庵額。

蓮子窓と下地窓。

下地窓。

如庵内部。有楽窓。

如庵内部。点前座。

如庵平面図