高野秀行『異国トーキョー漂流記』(集英社文庫 2005)を読む。
この本に出てくる外国人は、フランス人、コンゴ人、スペイン人、ペルー人、中国人、イラク人、スーダン人、と地域も国籍も様々だが、みな東京で知り合い、関わってきた人たちだ。時には相手の言語を習い、時には宿無しを家に泊め、結婚式のスピーチを頼まれたり、世話になったり世話をしたりしている。
どれも面白い話であるが、第2章と第4章のコンゴ人ジェレミーからリンガラ語を学び、探検部を引き連れてコンゴへ向かう話とその後日譚がいい。
コンゴへ行くたびに、ジェレミーの家族へ手紙を届けるのだが、パリで生活しているジェレミーの兄ドンガラから弟にと託された彼の書いた小説(フランスで出版)を飛行機の中で読み感動し、日本語に翻訳してしまう。
当時、早大文学部仏文学科に在籍していた高野は、このドンガラの小説の翻訳を卒業論文に代えてしまうのである(それもその年の在席学科の全卒論の最高得点を獲得してしまう)。
その後、ジェレミーは日本人女性と結婚することになるが、高野は結婚式に招かれ、友人としてスピーチをする。コンゴのジェレミーの家族の優しさ・暖かさやフランスやアメリカで活躍する兄弟のことを紹介すると新婦の両親や親戚から心から感謝されたりする。
さらに兄のエマニュエル・ドンガラの翻訳本は、高野の奔走で、日本での出版までこぎつける(『世界が生まれた朝に』小学館1996)。そのことがきっかけとなり、コンゴが内戦になりドンガラがアメリカへ移住する際には、ニューヨーク州移民局から高野に問い合わせがあり、彼が国際的に評価されている作家であることの証明者になってしまうのである。
最終章の盲目のスーダン人マフディとの交流も本当にいい話である。
