狩宿白山神社(旧狩宿村氏神)
1 社名 白山神社
2 所在地 尾張旭市狩宿町3丁目143番地
3 祭神 菊理姫命(ククリヒメノミコト)
明治43年(1910)村内の瀬戸川東岸にあった山神社(祭神大山祇神)を合祀。
*白山神社の本社は、白山ヒメ神社といい石川県白山市にあり、奥宮は白山市白峰の白山御前峰山頂付近に鎮まる。白山は石川県と岐阜県にまたがる海抜2702mの山で、富士山、立山と並んで日本三霊山の一つに数えられている。尾張地方の白山神社は、美濃馬場(馬場とは禅定道の起点)の長滝白山神社(長滝寺)〈岐阜県白鳥町〉の影響下にあり、古来祈雨を願う農民の信仰を集めた。
4 創建・伝承
・創建年代は不明だが、社伝に天正2年(1574)狩宿城主浅井紋助源為頼が社殿を造営とある。(尾張旭市誌)
・『東春日井郡誌』に寛文13年(1763)再建、延享2年(1745)の棟札あり、との記述。
*『尾張徇行記』に「瀬戸村祀官二宮治部大夫書上ニ、氏神白山社内三段一畝歩前々徐」とあり、昭和初期まで瀬戸深川神社神官が任にあたった。
・鳥居の右側に「三山禅定」の記念碑が建てられている。
*碑文 南面「冨士浅間大菩薩 立山和光大権現 白山妙理大権」 西面「先達 大竹平蔵 同善蔵 同林之右衛門 同三右衛門 同弾蔵」 東面「天明二壬寅年九月吉日」 とある。
天明2年(1782)に狩宿村の大竹平蔵以下5名が、三山巡拝を無事成し遂げた記念としてこの碑を建立したことがわかる。
*富士山、立山、白山の三霊山をひと夏に登拝することを「三山禅定」と称し、修験者の最大の行とされていた。
5 文化財など
@ 陶製狛犬一対(市指定文化財)を所蔵。寛延4年(1751)の銘。
*狛犬の阿形は高さ32.2mで二角を有す。吽形は高さ32.3mで一角を有す。背面に呉須による釘彫り銘が施されている。その銘文には、「春日井郡狩宿村 寛延四天(年) 林岡之左エ門、大竹平蔵、大竹元左エ門、林円介、大竹山一郎」とある。碑文の先達の大竹平蔵は、天明2年(1782)に「三山禅定」の 記念碑を建立した人と同一人物と思われる。
*この狛犬は、昭和34年(1959)9月の伊勢湾台風の時、盗難にあい行方不明になった。その後、古陶研究家で陶磁器収集家の本多静雄氏(実業家でエフエム愛知初代社長でもあった)が出版した『陶製狛犬』に、盗難にあった狛犬の写真が掲載されているのを見つけ、愛知県警を通じ本多氏に返還をお願いしたところ、昭和51年(1976)本多氏より無償で返還され、17年振りに里帰りした。昭和52年、返還の条件であった盗難防止用の収蔵倉庫を建て、そこに大事に保管されて今日に至っている。
〇参照 本多静雄「狩宿のこま犬」『陶説』281号 (昭和51年8月)
A 境内は、現在は閑散としているが、伊勢湾台風の被害を受ける前は、鬱蒼とした森に覆われていた。

狩宿白山神社境内

「三山禅定」の記念碑

陶製狛犬一対(市指定文化財)