渋川神社は、悠紀・主基の斎田斎場及び京都御所北方に設営された北野斎場内院の八神殿に祭られた
御膳八神(みけつはっしん)を祭神としている。主祭神は、
高御魂神(タカミムスビノカミ 渋川神社では、高皇産霊神と表記している)。
高御魂神(高皇産霊神・高木神)は、天照大神が皇祖神として確立される以前に高天原の中心神(天つ神=天神)として崇敬され、恐らく御膳八神が整備される前の中心神であったと推測される。以下、御膳八神を列記する。
@ 御歳神 (ミトシノカミ) 豊作の守り神
A 高御魂神(タカミムスビノカミ) 万物の創造を司る神
B 大御食神(オホミケツノカミ) 食物を司る神・
C 大宮売神(オホミヤノメノカミ) 織物と酒造を司る神
D 事代主神(コトシロヌシノカミ) 宣託の神
E 庭高日神(ニワタカツヒノカミ) 庭を照らす日の意、屋敷の神
F 阿須波神(アスハノカミ) 足元を守る神
G 波比伎神(ハヒキノカミ) 屋敷の内外を守護する神
〈『延喜式』〉
*御膳八神の他に、宮中には、神祇官西院に
宮中八神殿が設置されており、御巫(みかんなぎ 大御巫2人、座摩巫1人はじめ5名の巫女により構成)によって
神祇官八神が祭られていた。 神祇官八神とは以下のとおりである。
@ 神産日神 (カミムスビノカミ)
A
高御産日神☆(タカミムスビノカミ)
B 玉積産日神(タマツミムスビノカミ)
C 生産日神 (イクムスビノカミ)
D 足産日神 (タルムスビノカミ)
E
大宮売神☆(オオミヤノメノカミ)
F
御食津神☆(ミケツカミ)
G
事代主神☆(コトシロヌシノカミ)
(☆の四神は御膳八神と重複している) 〈『延喜式』〉
神祇官八神は天皇の魂を鎮め、天皇の健康や長寿を司る神々であった。これに大直日神(オオナオヒノカミ)を加えて執り行われた
鎮魂祭(みたましずめのまつり)は、神祇官八神の最も重要な祭祀で、新嘗祭(または大嘗祭)の前日(寅の日)に行われた。鎮魂祭は天皇の霊魂の活力を高めるための祭りで、浮遊する霊魂を身体の内に止めて心身の統一が企図された。
この日は太陽の活力が最も弱くなる冬至の前日であり、太陽神天照大神の子孫である天皇の魂の活力を高めるために行われた儀式と考えられる。また、新嘗祭(または大嘗祭)という重大な祭事に臨む天皇の霊を強化する祭でもあった。