隊長が北海道だし、林道でめぼしい収穫もないから、こちらも今日は北海道編でいってみよう。
日本半周のおりの、八戸から津軽海峡を渡って恵山岬を回り込んだ、北海道初の地、臼尻港でのことなど。
といっても今回は以前書いた旅行記の中から一部を抜粋する手抜き。少し長くなるけど、暇な方は読んでみて。
コンブの知識はちっとぐらい何かの役に立つかもしれない。
『臼尻港の朝は早かった。まだ深夜といえる3時半頃、クルマの音で叩き起こされる。4時にはもう船のエンジン音がブルブル、ドドドドと響き始める。
ボートのすぐ近くにもクルマが止められ、いきなりなにかの作業が始まった。テントから抜け出てみると、夫婦二人でトラックに小舟から何やら引き上げ積み込んでいる。これが生まれて初めて目にした生のコンブであった。
しかし、驚かされたのがその大きさ。一枚のコンブの幅が広く、とても長い。こんなのがたくさん生えていれば海の中は森のようだろう。
前日はまったく気付かなかったのだが、日中沖で採ったコンブを港の小舟に、それもトラック一台分ぐらい吊るしておいてあったのだ。船の下に隠れていたから分からなかったが、うっかり立ちションなどしなくてよかった。
これを早朝引き上げ、洗浄し、それから干すのである。
ただ、あとで分かったことだが、一軒の家でこれほどの収穫があるのは、地元漁協が養殖コンブに力を入れているからだった。さほど大きくない臼尻港だが、ここがコンブの名産地で、全国で2万トン生産されるうちの2割、4000トンを産する港だったのである。
臼尻港は活気があり、漁協には大勢の職員がいて人の出入りも激しい。その中へづかづかと入って聞いたのだが、参事さんが、臼尻のコンブは幅広で身が厚く、切り口が白いどこよりもダシの出る真コンブである、といばって教えてくれた。
失礼を顧みず「そのわりには、臼尻コンブって聞いたことがないですねー」なんてぶつけると、ここのコンブは1600年ごろから北前船で大阪まで運ばれた、日本でもっとも古くから流通しているもので、「酢コンブやトロロコンブを知っていいるでしょ、あれのほとんどがここのもの」と説明してくれる。
さらに詳しく聞いたところ、コンブにはダシをとる「ダシコンブ」、煮しめて食べる「煮コンブ」があり、臼尻の真コンブ、利尻の利尻コンブなどがダシコンブで、日高コンブや道東のナガコンブが煮コンブであるとのこと。
また、ダシが濃くてどんなに煮込んでも煮くずれしないのが本物のダシコンブであり、臼尻のコンブだ、と胸を張っていた。利尻コンブや日高コンブのように、産地の名が付いていればもっと有名になっていただろうが、ここで採れるのは「真コンブ」と呼ばれるものだからしかたないのかも。
そして、ブラブラと散歩していると、それぞれの家にコンブの乾燥場があるようで、あちこちの建物の中からボイラーを焚くような音が聞こえてきた。これもあとで分かったことだが、北海道の各地では、一般的に天日干しにするところが多く、臼尻ほどの量があるところは見られなかった。
また、共同作業場のような場所があり、人がたくさんいて、乾燥の終わったコンブをワイワイ楽しそうに荷造りしていた。写真を撮っていると、その中の一人が「これもってけ」と、コンブを5〜6本手渡してくれ、ありがたくいただく。
このコンブ、あとあとさかな料理をつくるとき、すばらしい味をだしてくれたのである。もらったからではありませんよ、ホント。味が濃くてこれほどダシがでるものかと、コンブの概念がまったく変わってしまったほど。
もらいものはコンブだけではなかった。
早朝港を出て行った船が戻ってきたので、のぞきにいってみると、タラやエビ、貝、タコなどを船からトラックに積み込んでいた。「これ何ですか」、「こっちは?」と聞きながら、写真を撮らせてもらっていると、一人が「食いな」とボタンエビを両手にいっぱいつかんで差し出す。
あまりに旨そうなのでこれまた頂いてしまったが、「こんなに食べきれないヨ」というと、船主の奥さんとおぼしき人が、「小さいのは生で、大きいのは焼けばいくらでも食べられるから」と、食べ方まで教えてくれる。「タラも持って行くか」と何でもくれそうな気配に慌てて辞退申し上げる。
ウ〜ム、北海道はみんな人がよくてなかなかすばらしいところだゾ。
この日の夕食はさっそくいただいたボタンエビを食べた。クーラーボックスにたっぷり氷をしてあるから形もくずれずヒンとしていて新鮮なままだ。このボタンエビは舌にベタつかず、しかしトロっと甘く、過去に経験ないイイ味。そもそも鮮やかな赤が光って美しいのである。
もっと驚かされたのが、このさかなやエビ、カニ類、すべて一つの漁法、カゴ漁で獲れたものなのだ。カゴに冷凍のスウケソウダラ入れておくと、エビやらツブガイ(深海性)、ウニ(深海性)が入り、それを食べようとするのか、タラやタコなども入るのである。
漁場は沖合1時間も走らない場所で、水深120メートル前後とのこと。北海道の海の中は、大きなコンブがあったり、エビがいたりで、どうなっているのか、まったく想像がつかないゾ。』

1