魚群探知機の画面。イナダがアジの群を襲っているところ。アジは普通海底付近にいることが多いが、イナダに追われて海面近くに逃げている。
魚のエサとなる動物プランクトンのカイアシ類。大きさは1ミリ弱程度。これが海の中には全魚の10倍の量もいる。広角レンズを逆さにして撮影。顕微鏡があるのだから、それで撮れよな〜
仕事と遊びの区別がつかなくなっている私だが、それでもこれだけはどうしても結果をだしておきたいというものがいくつかある。
いわゆるライフワークである。
その一つが海の中の魚たちの生態を科学的にみつめること。
田舎から東京へ出て、都会のめまぐるしい生活にいやけがさし、釣りを始めて伊豆方面へ出かけるようになったのが30歳前。そして、釣りに熱中すればするほど、魚の生態に強く疑問をもつようになっていく。
ようするに一生懸命やっても釣れないから、魚の生態への疑問がどんどんふくらんでいくわけだ。
たとえばブリはどこで生まれ、何を食べて育ち、どこを回遊し、最後はどんな状態で死んでいくのだろう。そのあいだにどんな天敵に襲われたり、どこで人間に捕獲され誰に食べられるのだろう、てなぐあい。
そんな目で魚をみていくと、あまりにも不思議なことだらけだ。これらは学者にもよくわかってないのである。それは海があまりにも膨大で深いし、本物の野生であるから。魚の種類も研究者の数より多いかもしれない。
そんな中、ふと気付いたのが自分の海へ出る回数の多さ、魚探(魚群探知機)で海の中をいつも覗いていることである。魚探はダイビングの限界水深50メートルをはるかに超え、水深1000メートルの海の中をもみる。そして、あらゆる魚たちの不思議な動きをとらえる。
また、釣りの対象魚だけでなくハリに掛らない小魚やプランクトンまでも映し出す。
魚探は魚が小魚を食べる瞬間まで映すし、動物プランクトンの群の中で乱舞しているのまでとらえるのだ。このあたりを記録したり、魚探に映るものが何か分析してみたいと強く思ったのだ。
そして、ある雑誌に2ページの連載を始めたのだが、しかし、経費が原稿料以上にかかり、趣味、自費でやるわけにもいかないから、一度は頓挫しそうになる。
ところが、別の雑誌、ボートクラブ誌の編集者、ホッシーがこれを見ていて、たいへん面白いと手をさしのべてくれたのである。
そして新たな連載が始まり、その成果の一部が一昨年おおげさなタイトルの「魚探大研究」というムック本となったのだ(3人の共著で昨年単行本化された)。
またここで、これまで連載してきた記事をもとに一冊単行本を出す話が決まりつつある。
しかし、最近はなんだか貧乏生活に追われ、取材もマンネリ化して、初めて雑誌に原稿を書いた頃のような不思議や疑問に強く切り込む意気込みが足りなくなってきている、それに気付いた。
いい本というのは、これをあきらかにするぞ、とか、これだけは伝えたいとする強いエネルギーが必要なのだ。
なわけで、原稿料はメチャ安いのだが、気持ちをあらたにし、自分にしかできない世界を一冊つくりあげてみようと思う。まだまだ貧乏生活が続く〜。

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