久々の青空だし、フクロウの観察を後回しにしのんびり林道を歩いてみた。
そして、ヤマガラがエサをついばんでいるのを見つけ、カメラを構え写真を撮っていたときのことである。
足元で突然、トッタ、トッタと、足音がした。
ン? イヌ? イヌなどみなかったし気配もなかったぞ。
それにわざわざ足元を通らなくても、とファインダーから目を離すと、アワワワ、何かが跳ねていて、ぶつかりそう。
ウサギだ! しかもでかい!
動くな! 止まれ!
アーッ! カーブを回って見えなくなってしまった。林へ入ったかなー?
いや、まだ林道かもしれないと、2、3歩追うと、ピョンピョン逃げていくのが見えた。
ア〜ァ、ついに見えなくなってしまった。
久々のウサギなのに、うまく撮影できなかった、と画像を確認しいていると、
ン? ネコがウサギのいた10メートル後ろに。
白い顔のネコ? ンなわけがない。ウゲゲゲ! テンだー!
しかもキテン。
アッ、どんどん近づいてくる。止まれ、止まれ! ピントが合わせられないゾ!
ウッ、林に入ってしまう・・・。
毎年のように5月の始め頃テンを見かけるが、動物の子供が巣立つのを狙ったり、鳥の巣を襲ったりするためだろうと思っていた。
しかし、このテンが成獣のウサギ追っていたのは間違いない。私から逃げるだけならウサギは林へ入ればすむのだ。
そして、ふと頭をよぎったのがフクロウのヒナである。
テンを見て急に不安になり、急いで戻り、巣をのぞいてみたら、なんとヒナがいない。
巣立ったのか、それともやられたか。
周囲の枝を一つ一つ探しても、どこにもいない。
私がうろついているから、巣立ちを急いだ可能性もあるが、お兄ちゃんが襲われたとしたら、もう一羽ヒナがいるのも知っているし、簡単に見逃すはずないのである。
がっかりして、暗い気持ちで帰りかけたのだが、後ろ髪を強く引かれる。それでまた舞い戻って、巣から30メートル離れた観察ポイントに座り込んで周囲を眺めながらしばらくフクロウのことを考えていた。
ハイキング客がゾロゾロ行き交う中で、テンがウサギを追い、大きなフクロウが命がけでヒナを守っている。この森の、野生のすごさを想う。
そのとき、50メートルほど先を大きな鳥が飛ぶのがちらっと見えた。
立木の間を低く飛んだし、フクロウかもしれない。
カケスがその近くでギャーギャーしつこく鳴き始めた。モビングのようだ。
しばらくして、ボボボボッ、と低い音で何者かが鳴いた。これまで、何度か巣のヒナが鳴くのを聞いているが、この鳴き方はなかった。でも、フクロウの可能性が高い。
なおも耳をすましていると、今度はボウ、ボウと鳴いた。もう間違いない、ヒナは巣立っていたのだ。
嬉しくなり、今日はもうこれ以上追うのはやめにしたのである。

0