林道の散策を終え、縁石に腰をおろして一服していたときのこと。
山側の斜面でガサゴソ、ボキボキと音が聞こえてきた。耳を澄ましていると「ビー、ビー」鳴き声を発しながら、どんどん斜面を降りてきて、その距離20メートルほどになる。
そこから足音が横に走りはじめ、笹薮の中を林道と平行に遠ざかりだした。これだけ大きな音を出すのは人間以外イノシシ、サルぐらいしか思いつかない。
で、その足音を追ってこちらも急ぎ足で移動する。
これがけっこう速くて、小走りするほど。バキバキ、ザザザザと音がやたら派手だ。そして、100メートルも追っかけた頃、音が下りはじめた。
これは林道へ出てくるに違いないと、急いでひざを突いてカメラを構えた。
そして、ファインダーをのぞいたとたん、なんとほんとうに飛び出してきたのだ。しかも40、50キロのでかいイノシシが5、6メートルほど先にだ。
一瞬ビビって逃げたくなったが、姿勢を低くしたまま、ピクリとも動かないようにした。しかし、シャッターを押さないわけにはいかない。
イノシシはこちらに顔を向けることはなかったが、途中で一度止まり、匂いを嗅ぐ仕草をする。
それからゆっくりと下り斜面へ入っていったが、なんとそれを追って次から次へと6頭もの子イノシシが続いたのである。子イノシシはもうウリボウではなく20キロ以上ありそうで、親にそっくりの姿。
初めて間近に、しかも全身を見てその迫力に感動したのだが、しかし、写真はまったくダメだった。
襲われる可能性もあったから、緊張して固まったままで、露出計など見る余裕がなかった。
写真はトリミングなしで、暗いのを無理やり明るくしたもの。ハー。

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