リスは、冬を乗り切るためクルミと松ぼっくりを貯食をしているのが、資料などからも確実である(現場を見たことがない)。
貯食するのは主にクルミと松ぼっくりで、場所によってはこの二つでエサの80パーセント以上占めているようだ(クリやドングリも貯食)。
リスは、クルミを春をのぞいて一年中、松ぼっくりもほぼ一年中食べているからきわめて重要なエサなのだ。
また、クルミは堅い殻を持ち保存性がいいし、割れるのはリスとネズミだけ。しかも主に木に登り採取するのはリスだから、ネズミに食べられない場所に隠せればほぼ一人独占できるわけである。(ヒメネズミは木登り上手で、アカネズミも登ることができるが、大きなクルミをくわえて上り下りは大変な運動量になるから、もしあってもリスより頻度が極端に少ないはず)
それゆえ、周辺にクルミの木があれば、少々遠くても青い内からもいで運び、貯食する。
写真のクルミの木は前項のクルミ(第二クルミの木)からさらに200m下った位置に一本だけあるもの。これを「第三クルミの木」と名付けよう。
第三クルミの木は、写真のように周囲を密集した笹薮に広く囲まれ、初めて発見したとき、多くの巣から距離もあるし、ここまでリスは来られないのでは、と思った。
さらにここから300m散策道を下った場所に第四、第五クルミの木があり、そのまた100m下に第六クルミの木もある。これらの周囲は低木の落葉広葉樹ばかりだし、林道の巣まではるかに距離があり、ここに食痕を発見したときはほんとに驚いた。まかさ林道のリスが食べているとは思えず、まるで理解不能に陥ったのだ。
しかし、田村さんの論文から、リスの行動半径が5、600mは普通あるのが分かったし、クルミがあればもっ遠くても苦難を乗り越えて行き着きそうである。崖を下り、笹薮を抜け、沢の岩地を乗り越えて、また天敵からうまく身を隠しながらきっとここまでクルミを採りにくるのだろう。
第四、五クルミの木や第六クルミの木の周囲300、400m以上が、松や針葉樹のまったくない低木の落葉広葉樹林で、今の知識で見るかぎりリスの巣があるとはとても考えられないのだ。
写真は昨年11月4日に撮影した、林道を渡っていたところを偶然見つけたリス。私に驚いてとりあえずこの木に登っただけ。この場所は私がリスの森の行動エリア限界とした最も西側付近で、ここの林道の山側にも谷側にも松の木も巣もない。周囲にわざわざここまでくるだけのエサとなるものが見当たらない場所なのだ。
行動不明なリスだったが、考えてみると、私が現在巣が最も残っているだろうとする、はるか水源地あたりとクルミの木を結ぶ、直線上の場所ではある。このとき、もし貯食したクルミを取りにきたとすれば納得できる。(雪のとき渡った足跡もあった)
でも、たとえば水源地からだと斜面を直線で結んでも、第二クルミの木までで600、700m以上ありそうに思える。
しかし、面白いことに水源地あたりからクルミの木に向けて直線を引くと、第二クルミの木も、第三、第四、五も六も扇状に広がるだけで、それほど距離に差がないのが今回分初めて分かった。
HP「奥多摩けもの道」の自動撮影のカメラに、尾根筋をクルミを2個もくわえ登っているリスがとらえられている。リスは一日何度もクルミを運んでいたそうだ。
http://homepage.mac.com/onwogawa/risu.html
制作者「小川羊」さんによると、
2001.8月 この時期、連日、何度もオニグルミの実をくわえて運ぶ。このカメラを設置しているのは尾根筋なので、かなり下の方からくわえて登ってくるものと思われる。
2001.8.28 18:14 地上を重いクルミを二つもくわえて走るのは、かなり危険な事であると思われる
とある。
林道周辺の巣の環境を失い、天敵で数を減らしたリスは、それでもこれまで以上に遠くから、クルミを採りにくるだろうか?
(前項を少し加筆修正しました)

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