刺し網にかかったマダイを外すところ(青森県深浦港で)
先日「相模湾の環境保全と水産振興シンポジウム」を小田原市役所まででかけのぞいてみた。
いくつか興味をひくタイトルがあったからだが、内容が私の期待していたものと少々違ったり、観測データをただ羅列しただけ、なんてものもあったが、意外やゲストで登場された漁師3人の発言の中に、経験にもとづいた注目させられる話があった。
それを紹介してみようと思う。
3人はそれぞれ、大磯漁港で定置網を経営されている漁師Kさん、小田原漁港で刺し網を営まれている漁師Sさん、平塚漁港で遊漁船業をやられている漁師Gさんである。
まず最初に発言された定置網のKさんは、水深30m以浅の浅い海に網を仕掛けられているが、最近はマダイや金色をしたアジなど昔から浅瀬にみられた魚がどんどん減少している、またアオヤギやコマタガイなど何年にか一度湧いて、浜を賑わせたりしていたが、そんなことが少なくなってきている、それは海底の硬化が原因ではなかろうか、といわれていた。
Sさんの刺し網には、これまでヒラメ、マダイ、マトウダイ、アンコウ、クルマエビ、ガザミなどがかかってきたのだが、ここ数年エビやカニなどの甲殻類の漁獲は皆無だそうだ。
クルマエビやガザミは砂地に生息するし、刺し網は主に砂地にかけるものである。
また、遊漁のGさんは、釣りもの変化、海の変化とともに、地元平塚を流れる相模川河口付近の浅瀬で魚が少なくなったこともあげられていた。
この三者は、もとは一本釣り漁師であり、そもそも漁獲が減ってそれぞれの今の漁業の形態をされているわけである。
その三者が共通していわれたのが、さらなる浅瀬の魚の減少、海底の硬化であろう。
川から流れ出る砂や養分の減少は、砂浜を後退させ、海底の砂を硬化させる。
硬い砂はベントスや微生物を育まず、それをエサにする小魚やエビなども生息できなくする。小魚が少なければ、それを狙うマダイやアジだって回遊しなくなるのである。
また、浅瀬の砂地を生息場にするキスという魚がいるが、こいつは大型魚に狙われると砂に潜って逃げる習性をもつ。同じようにカレイやヒラメ、マゴチも砂に潜ってエサをとったり隠れたりする。
でも砂地が硬化したらこれらが潜れなくなってしまうのだ。
3名は40年、50年以上の経験をもつ漁師である。それがくしくも同じことを言っておられた。
この意味はたいへん大きいのである。

1