これはしろいぬの里本館に突如落とされた、小型ポメラニアン爆弾のため一時中断していた「愛の白柴物語」の続きです。
作者がPCのマイドキュメントの隅に放置してあったものを掲載しております。
月丸は胸の高鳴りを抑え、何事もない風を装ったのだが、用もないのに家の中を走り回ったりすることで、まわりの者たちにはそれと知れてしまっていた。
凛月は前日に手術を受けていた。

そのせいか大人しくベッドで寝ていた。
が、元々大声で騒いだりすることもなく、穏やかな性格であった。
月丸はひとしきり走り回った後、凛月の姿を遠くから盗み見していた。
「めんこいおなごはんや〜特に目ぇがええわ〜わいの目ぇと似てるんとちゃうか?」
いや!断じて似ていない!
柴犬の目はよく「 はまぐりの目がいい目だ 」と言われるのだが、月丸の目はアサリである。
いや・・・最近ではシジミか・・・
そして月丸はゆっくり凛月に近付いた。
友好的に、かつ紳士的に挨拶をするつもりで・・・

今度こそ!という気持ちがなかったか?と言えば嘘になるであろう。
しかし・・・
凛月を目の前にした途端、これまでの決心はどこへやら?
突如、柴犬魂が炸裂してしまったのだ!
いや・・・もっと月丸の心の底を覗いて見るならば、凛月に対する恥じらいのようなものが、気持ちとは裏腹の態度を取らせてしまったのかも知れない。
よく言うところの・・・好きな子はいじめてみたい・・・そんな少年のような心があったのではないだろうか?

しかし凛月は、そんな月丸の微妙な気持ちなど理解するはずもなく、タダでさえ手術の後で気が立っていたところに持って来てこの有様・・・
また彼女も柴犬魂が炸裂してしまったのだ!
そしてその後延々と爆吠え合戦が繰り広げられた。
そしてついにはイラついた本館の女将の手によって、哀れな月丸はしろいぬの里本館の北の最果て、別名網走刑務所に収監されてしまったのだ。
風のうわさでは、彼は新年を網走刑務所で迎えたとか・・・
凛月は犬あたりもよくご近所でも評判の娘であった。
どんな子ともそつなく挨拶が出来る穏やかな性格なのだ。
それなのに何故月丸とは一戦交えてしまったのであろうか?
それは・・・月丸が
白柴界の海老蔵と呼ばれていることに関係するのかも知れない。
実は月丸は、他の犬を怒らせることに掛けては天下一品なのだ。

どんなに普段穏やかな犬でもたちどころに怒らせてしまう、一種の特技とも言える態度の悪さを、その心根の中に持ち合わせているのだ。
そう・・・例えば灰皿にテキーラを注いで「これ、飲めや!ああ〜?」と言ってしまうような・・・嫌な男なのである。
凛月は思った・・・
例え別の場所に連れて行かれたとしても、あんな男と同じ屋根の下で暮らすなどもってのほか!
年が明けたら出て行かなくては!
そしてまた一つの恋が終わってしまった。
あの日、月丸が凛月に吠え掛からなければ運命は変わっていたのだろうか?
あの日の自分に何か言う事はあるか?と問えば、月丸もまた「吠え掛かるのを止めなさい」とつぶやくのであろうか・・・
歳はいってるけど黒シバージョさんが
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