ぶっちゃけ仮母はタロさんのことが嫌いでした。
っていうか大嫌いでした。
全然言うこと聞かないし、何でもすぐ壊すし、ちょっとでも気に入らないことがあるとすぐに遠吠えをする。
特に最初の2週間くらいは「とんでもない犬預かっちゃったわ〜江戸川に棄ててこようかしら・・・」と1日に10回くらい考えたものでした。
でもそんなタロさんでも段々と心を開いてくれて、この頃では本当に落ち着きが出て来ていい子になっていました。
コマンドは、オヤツなんてなくても完璧!
あの誇り高い北海道犬が、お散歩中に突然仮母が出す「オスワリ!」に即座に反応して座ってくれるようになっていました。
お散歩のマナーも「前に出たらダメでしょ〜?」と言うとえへへ〜というようなお顔を見せて、仮母の手に「ごめんね?」の合図の鼻ツンツンをして来ました。
仮母が外出から帰ってくると、大喜びで飛び付いて来て、そのあたりを走り回りました。
ご近所の小学生にも可愛がられて、小さいいもけんぴまろんくんにも優しくしてくれました。
ジロさんにまで喧嘩を売っていた、すさんだ頃が嘘のようです。
タロさん、最初は星5つのツワモノだったけど、この頃じゃどこに出しても恥ずかしくない仕上がりね?
そう思えたので、ドタキャンにもめげずまた募集を掛けました。
そんなタロさんにはすぐにアンケートが届きました。

見るとこれまでのタロさんの事も全て納得して下さって、アンケートの質問には
■何故ご希望の保護犬を選ばれたのですか?
気合いの入った顔立ちと根性ある性格が家
族全員気に入りました。
・・・と書かれてありました。
ほとんどお留守番もなく飼育環境も申し分ないご家庭で、仮母はもう有頂天でした。
タロさんのところにすっ飛んで行き、タロさんの両の前足を取って喜びを分かち合いました。
そしてお見合いの日取りも決った次の日・・・
虹ちゃんとほっしーと一緒に、車に乗って狂犬病予防のワクチンを接種しに行ったのです。
軽い健康診断のあとワクチンの接種・・・
3匹とも何事もなく終わって、いざ車に乗って帰路に付きました。
行きもそうでしたが帰りも物凄い渋滞で、帰るのに一時間くらい掛かったでしょうか・・・?
やっとのことで家に付いて、みんなを下ろすべく車の後ろのドアを開けました。
車に乗ると酔ってよだれがダラダラになる綿菓子たち・・・
辛かったのかキャンキャン怒ったように鳴きました。
すると・・・
ん?タロさん寝てるの???
いつもなら飛び出さんばかりにケージのドアの前で勢い付くタロさんですが、何故か目を閉じたまま動かないんです。
「タロ?タロさん?どうしたの?苦しいの?」仮母の問いかけにも応えません。
ケージのドアを開けてタロさんの体を揺すっても、何度声を掛けても、仮母の手の動きにやや遅れ気味に体が付いて来るだけで、目を覚ますことはありません。
ただただ穏やかに眠っているようにしか見えませんでした。
仮母は本当は何が起こったのか分っていました。
でもそんなの認めたくなかった、「うそ〜何で?どうして?」「タロさん、冗談やめて起きてよ〜!」犬が冗談で寝た振りなんてしないことぐらい仮母だって分っています。
でも、それでも起こりもしない奇蹟・・・「神様、お願いします、タロさんが亡くなる前に時間を戻して下さい。」と願わずにはいられませんでした。
でもいくらそう願いながらタロさんを見ても、全くもって微動だにしません。
今起こっていることは全部嘘!ってならない???「やだ〜びっくりさせないでよ〜」と喜んでいる自分を想像したりしました。
でもふと現実世界に帰ると、物事はなにも変わってはいませんでした。
あとちょっとで幸せになれるところだったのに、どうして???
今日まで頑張ってきたのに何でなのっ!?
虎の穴の修行に耐えてきたんでしょ?
何でこんなにあっけなく死んじゃうの?
駐車場にへたり込んでタロさんのケージを見上げ、どんなに願ってももうどうにもならないことが分ると、仮母はおもむろにドアを開け・・・
恐る恐るタロさんの目を開いてみると・・・ゲッ!瞳孔開いてるし・・・
いつもは普通の犬より小さいくらいの、ヘビのような瞳がブワ〜ッと緩んでいました。
ああ。。。もうダメなんだわね・・・
それから仮母は病院に電話をし、ことの詳細を伝えました。

死因は思ったとおり、急性アナフィラキシーショックとのことでした。
仮母は打ちひしがれて「あんなに楽しみにしていて下さった里親希望の方に何て言おう・・・」
どうにもこうにも気持ちの整理が付かないまま夜を迎え・・・でも早くお知らせしないと、と思いやっとのことでメールをしました。
やっと肩の荷が下りたと思いましたが、今度はこれまでに感じたことのない脱力感、虚無感の嵐、嵐、嵐。。。
ボ〜ッとしていると涙が滝の様に流れて来て、春馬くんが亡くなった時とは全然違う重みを感じました。
タロさんが我が家に来てから3ヶ月半・・・「こいつが死んでも絶対泣かないわね〜」って思っていたのに、共に闘った戦士のような間柄だったから、いざ居なくなるとこんなに辛いんですね。
次の日も仮母はソファーの毛布にくるまり、何もする気が起きずただうだうだしていました。
最近大変なことばっかりだったから、ボランティア嫌になっちゃった。

もう止めようかしら。。。
気を取り直して収支報告を作成しようとしても、どうにもこうにも気がそぞろしなってしまいます。
そんなことをしてはまたソファーに逆戻り・・・
そんな時でした。
付けっ放しのテレビから、地震の被災地で働く自衛隊の方々の様子が流れて来たのです。
来る日も来る日も瓦礫の中から、被災された方々の亡骸を探すお仕事をされていました。
そして亡骸が無い所には白いテープを張り巡らせて、「ここは重機で瓦礫を撤去してもいいですよ」という印を付けます。
「毎日この仕事をしていて何が辛いって、亡骸が見つかった時です。」と言う言葉の重いこと重いこと。
仮母の大変さなんてどれほどちっぽけなものなの?と自分が恥ずかしくなりました。
「そうよ!私ってちゃんと譲渡したってどの道泣くじゃない?だったらタロさんは神様に譲渡したことにしよう!」そう思うことにしました。
だってね、譲渡して目の前から居なくなったのと、亡くなったのが、仮母にとっては同種のものなんです、不思議なことに・・・
だから、頑張ろう!


明日も頑張ろう!
明後日も頑張ろう!
諦めないで頑張ろう!
神様?タロさんはいい子にしていますか?
何でも出来て、今や自慢の子なんですよ。

末永くよろしくお願い致しますね。
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