
その大砲は後の世界大戦時も徴収されることなく、ここ五稜郭で眠っていたという。
古戦場・・・。
「戦争を知らない世代」のオレだが、何故かここには不思議な空気を感じる。
母さんかばあちゃんが来たら、さぞかし色んな物が見えるんだろうな・・・。
かつて思想と思想のぶつかり合いの果てに、出会い方が違えば酒を酌み交わしていたかもしれない漢同士が殺しあった場所で、タバコの吸い殻を平気で投げ捨てる事になんのためらいも無いのだろうか・・・。
なぜか申し訳無い気分になり、静かにオレの口から出た言葉は
「拾いな・・・。」だった。
言いながら違和感を感じた。
あれ?デジャブ?
資料館の中にはかれこれ3時間はいただろうか。
なんとなく離れられなかった。
それにしても人が多い。
五稜郭とはこんなに人気のある場所なのか?
てっきりさっき寄った洞爺湖と同じくらいだろうと考えていた。
大河ドラマを観ないオレが、新撰組の放映開始直後だと知るのは、まだ先の事だった。

土方歳三氏の銅像は、幼い頃初めて高知で見た龍馬さんの銅像を思い出させてくれた。
京都からこの五稜郭・・・。
土方氏がここへ来るまでの距離が、今のオレにはリアルに理解できる。
交通手段は比べようもないが・・・。
明日の再会を思い、湧き上がる闘志を胸に、オレは五稜郭を離れた。
奇しくもほんの数日違いで総長がこの函館を訪れておられたとは、知る由もなかったのである・・・。

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