「北海道ゆかりのミュージシャンを応援するクラウドファンディング」のお話をいただいたときに、返礼品のオムニバスCDに収める曲をひとり1曲、提出するということを伺いました。
私は録音機材は自分の記録や練習用程度のものしか持っていないし、いまどなたかに録っていただくというわけにもなかなかいかなくて、以前録音して未公開のままの音源から選ぶことにしました。
昨年の5月に突然の訃報が届いたピアニストで音響エンジニアの高田光義さんに、2010年ころ録音をお願いして何度かスタジオに籠もり、気ままな演奏を録りためていたことがありました。
そのあと2011年の震災があって、どうしても気持ちが塞いでテイクを選んだりする気力が持てなくなってしまったり、演奏がそのあともっと変わっていくような気がしたりもして、結局長くお蔵入りになってしまいました。
今回あらためて高田さんから受け取っていたCD-Rを引っ張り出して聴いてみました。
高田さんは、言葉少なに、ににこにこしながら、私がとりとめもなくずっとカンテレを弾いているのを、丁寧に掬ってくださいました。カンテレの音が水分をたっぷり含んでいるのを、そのまま録ってくださったように感じます。
いま、コロナ以前のことはひとつ前の時代のようにも思え、さらに、その前にひとつフェイズが変わったように思えた東日本大震災よりも前で、そして録音してくださった高田さんも亡くなられて、自分のことで言えば癌を患っていなかった頃のことで、でもその録音をいま新鮮に聴いているのが、なんだか不思議な気持ちです。
オムニバスアルバム用には、この録音から自分のオリジナル曲を選びました。
ほかの演奏も、この際、まとめて形にしたい気がしています。

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