ヘルシンキでホームステイさせていただいた家のホストマザーMirjaさんは、どちらかというと無口であまり感情を表に出さないけれど、目元がおだやかに笑っていて、一緒にいるだけで、静かなくつろいだ気持ちになれる人だった。笑った目をしながら、少し口をすぼめるようにして、小さな声で話す。ある日、唐突に(と思えた)私に尋ねた。
「日本語で I love you は,何ていうの?」
「愛してる」
「ああ、アイシテル。ほら、アイシテルもアイ・ラブ・ユーも、ジュテームもイッヒリーベディッヒも美しいのに、フィンランド語ときたら、ミナラカスタンシヌア。ミナラカスタンシヌアで、ロマンチックな気分になれる?どう?」
Mirjaさんは、黄色のチューリップが好きだった。ミナラカスタンシヌア。たしかにあまりロマンチックじゃないけれど、なかなか楽しい響きじゃないかしら。
Mirjaさん、貴女を思い出すたび、「愛してる」とフィンランド語でつぶやいている私です。


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