2009/7/16

狼  映画

 新藤兼人の昭和30年の作品。
 ☆☆☆☆。
 知り合いの方(60歳ぐらいの方)が、是非見て欲しいと貸してくれました。

 まったく知らない作品でしたが、日本的ハードボイルドの傑作です。
 話は、戦後の闇市時代、現在のようにリストラされて職のない人々が、生命保険の外交員の募集で集まり、結局外交員としてはうまくいかず、現金輸送車を襲う話。いたって普通のおじさん、おばさんたち5人が、悪事の染まって、破滅していく様を、淡々と描きます。戦後の焼け跡や、貧しい長屋風景など、ほとんどオールロケのような映画です。

 やはりシナリオがいいです。台詞も短く、説明口調じゃない。紋きり型に陥りそうな題材ですが、乾いたタッチで、リアルに普通に描いています。今見ても古さを感じさせません。

 新藤兼人は、どちらかというとTVの脚本とかを見ていただけなので、台詞過多の演劇的な映画を作る人だと思っていました。

 ところが、この映画は、まさしく映画。映像とアクション(派手なアクションという意味でなく、登場人物の行動のこと)でストーリーが進みます。台詞は、いたって効果としての使い方のみ。説明的な台詞が一切なし。

 私は、劇音楽の使い方といい、影の使い方といい、カットの切れ(テンポ)といいジョン・フォードの傑作「荒野の決闘」を思い出しました。

 素晴しいのは、ほとんどオールロケだった点。多分独立プロで制作費がなかったためでしょうが、これによってリアル感が出ました。まるで、アメリカンニューシネマの先取りのようなものです。

 役者は、今では有名な人がほとんどでびっくりします。乙羽信子、小沢栄太郎、北林谷栄がいいですね。奈良岡朋子はちょい役ですが、なかなかいい雰囲気があります。

 それにやはり、シナリオが素晴しい。普通の人間がいかに犯罪に手を染めるか、そして犯罪を犯したものは、その良心の呵責によって破滅してしまうのです。その過程を冷徹に追っている凄さ。戦後の焼け野原がまだ残っている風景や安っぽい遊園地のシーンなど風景がそのまま主人公たちの心象風景のようにみえます。

 「狼」は隠れた名作でした。

 新藤兼人は、食わず嫌いでしたが、ちょっと見直そうかと思います。


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