2010/11/13

「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」  映画

 監督の根岸吉太郎が、モントリオール世界映画祭 最優秀監督賞受賞したそうで、主演の松たか子がなかなか評判よかったので、かなり期待してしまいました。だいたい期待するとよくない。

 根岸監督は、好きな部類の監督ですが、私が見るに当たり外れがよくある。今回は、私的には「はずれ」でした。

 とても力作。とても日本の映画水準の高さを感じさせます。太宰治風の詩人の夫役の浅野忠信は、素晴しい。彼の演技を見るだけでも、この映画を見る価値はあると思います(私は日本の映画界で男優では、彼が今のところ一番では?と思います。色気があり、演技に無駄がなく、よく染まる。最近作の「剣岳 点の記」の演技も好きでした)。

 かたや松たか子。まあ、今回は、ノー天気な雰囲気がよく合ってはいたけれど‥。なんか血が通っていないような演技にも見える。その点がこの映画の敗因のように思えますし、それは、彼女からいつも私が受ける印象。ちょっと損な女優だと思います。

 意外とよかったのが広末涼子の愛人。一緒に心中失敗する役ですが、なんかちょっと切なさがありました。

 シナリオは、原作をうまく膨らませていてとてもよく出来ています。多分シナリオだけ読んでも読み物として面白いぐらい。さすが田中陽造です。

 でも盛り上がらない。敗因は、やはり全体の流れを見通すような演出計画がない(ようにみえる)ことかな、と思います。
 それは、ここで盛り上がるハズなのにと思えるシーンをことごとくはずしてしまっているのです。

 例えば、心中した場所に妻の松たか子が訪れるのですが、そこでの心の動き。

 もう一つは、もと好きだった弁護士(堤真一)に口紅をつけて会いに行くシーン。そのあとの雑踏シーン。

 それに、ラストの浅野忠信と松たか子の夫婦が二人並ぶシーン(これはシナリオでとてもうまくオリジナルを膨らませていいシーンなのに)。

 根岸監督は、オーソドックスに撮る監督でそれはそれでとてもいいのですが、クリントイーストウッドみたいに、大事なシーンは、とても押さえながら、だけども情感が画面から溢れ出るような演出はできないものかと思いました(「マジソン郡の橋」のトラックの別れのシーンや、「ミリオンダラーベィビー」の安楽死させるシーンのように)。

 スタジオ内に作られたセットの街並みと、屋外の銀座(?)のシーンのあきらかな光線の違いも、とても気になりました。

 まあいい映画ですが、見る側に化学反応が起こるほどの映画ではなかったです。残念ながら。
 ☆☆☆。


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