2007/5/12

どん底  映画

 黒澤明の名作「どん底」(昭和32年芸術祭参加)を今朝見ました。
 実のところ初めて見ました。なんとなく演劇臭そうで敬遠していたのです。

 いゃ〜面白い!舞台的な(演劇的な)ものだと先入観がありましたが、全然違いました。まさに映画芸術、映画ならではの世界でした。画面は奥行きのある映像で、いわゆるパンフォーカス的な映像(手前にもしっかりピントがあっていて奥の方もしっかりピントが合っている)。この映画はマルチカム方式という複数(3〜5台)でワンシーンを一気撮ったという話で有名ですが、ただ今回見てみると、ロングショットでの切り替えしがあり、設置したキャメラがバレバレになりそうなのに、当然キャメラは写っていない。壁などが勝手に動いて演じていてビックリしたという話は聞いていましたが、あの状況で壁が動いているとは思えない。魔術的です。

 またマルチカム方式で撮ると、素材が多くなって後で編集は幾通りもできて悩むのでは?と思いましたが、黒澤はまったく無駄なくカット割をしているようで、思った画しか撮っていないように見えました。ただ単に演技を中断させたくないだけで、編集材料のためにしたのでないのが感じられます。カットつなぎがリズミカルでゆるぎないのです。それに構図が素晴しいし(時折、空が画面に入ることの素晴しい効果)、当然ながらライティングが素晴しい。

 まあ内容についてより、映像がとても映画的な映画で感動しました。
 内容は、不況であえぐ現在の我々(?)に染入るような内容で、心の持ちようで、「どん底」も居心地のいい場所になることを楽しく見ました。
 役者では、左ト全が、なかなかいいです。こんな聡明な左ト全は見たことがなかった。
 千秋実も、藤原鎌足もいつもどおりにいい味わい。笑ったのは、最後に同心役で出てくる加藤武。まさに雰囲気で、確か台詞は一言もなかったのでは?と思います。香川京子の若々しいこと。ピチピチしてました。それに博打打ちの三井弘次という役者がカッコいい。ラストの決め台詞もよかった。ラストは、落語みたいにイキです。

 途中から小4の息子も見ましたが、そこそこ楽しんでいました。まるでドリフの「8時だよ、全員集合!」みたいな猥雑でバカバカしい味わいがあるからでしょう。
 こんな映画を是非小学校で見せたらいいと思いました。小学校4年以上なら充分理解できる内容です。第一級の芸術作品ですし、子供が好んで見る作品ではありませんし、いろいろと考えさえられる内容でもありますし。いい情操教育になると思います。

 また見直してみたい映画です。やっぱり黒澤はいいですね!
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