ひとまず話は変わり、3年前から開催されているSFJについて。
1980年から続く入門カテゴリーのジュニア・フォーミュラとして一世を風靡したFJ1600は、30年目の今年でJAF選手権シリーズを終える。これに代わるシリーズとして、2007年からSuper-FJ(SFJ)が始まっている。ホンダ・フィットの1500ccエンジンを搭載、マシン前後に小さなウィングを装備するSFJは、2006年終盤、WEST社と東京R&D社から新マシンが発表された。
2007年は開幕からWEST社の07Jが各シリーズを席巻、圧倒的な勝利を飾る。R&D社のFV202は僅かに及ばず、後発の自動車工房MYST/オスカー社のKKSとともに後塵を拝する。08年は圧倒的な07Jに対して、マシン軽量化を始め改良を重ねたKKSが徐々に力を付けて拮抗するまでになる。FV202は善戦するも筑波で1勝を挙げるに留まった。09年にはKKSが圧倒的に強くなるかと思われていたのだが、ここで大どんでん返しが起きた。
07・08年と奮わなかったR&D社から、09年開幕直前に新車09Vが発表されたのだ。
09Vは2月末にシェイクダウンを済ませた後、3月初めの鈴鹿開幕戦をポールtoウィンで飾り、以後負け無しのポールtoウィンを続けている。鈴鹿と富士のシリーズに参戦し、現在全戦全勝の勢いだ。ドライバーが速いのか、マシンが速いのか。
一説には、風洞実験を経て完成された09Vのフォルムと足回りは、これまでの職人的な勘と経験を元に作られたどのマシンとも一線を画すもの、であるらしい。
それが事実かどうかはともかく、圧倒的に勝てるマシンに人気が集まらない訳はない。しかし、他社のSFJがだいたい350万円前後なのに対し、09Vは450万と価格がちょっと張る。さらにワンレース毎にレンタルされたマシンで勝った者は今のところ未だいない。
ここは悩みどころだ。来年は09Vを購入して走るドライバーは増えるだろうか。コレに乗れば必ず勝てるという訳ではない。しかし勝てるかもしれない、勝てる可能性は高いと考えて良いかもしれない。少なくとも、全勝マシンと同等の戦闘力のあるマシンを手に入れることは出来る。これは自信になる、レースはドライバーの技量だけで決まるものでは無いのだから。
さあ、頭の回転の速い読者には、何が言いたいか、もう分かっただろうか。
そう、ひとつはここだ。
ドライバーの技量だけを競うカテゴリーは既にある。
F3の直下に位置付けられて4年前から開催されているFCJだ。ほぼ完全なイコールコンディションでマシンとエンジンを管理して行われる育成カテゴリー。フォーミュラ・ルノー改を1年間一千万以下のエントリーフィーで貸与する。レースは日本最高峰のフォーミュラレースの前座で全国4つの主要サーキットで行われ、プロドライバーのレクチャーや指導も付いている。トヨタ・ニッサン・ホンダの資本も入って将来はF3にステップアップという前提付き。但し、年齢制限がある。限定Aライセンス所持者(16才)から26才未満。F3に乗る事を前提にするなら、若ければ若いほど適応力や可能性はあるということか。
かつてF3へのステップアップカテゴリーと目されたF4だが、そんなカテゴリーと互角に太刀打ちできる訳はない。このまま朽ち果てるしかないのか。
かつてはトヨタ系のフォーミュラ・トヨタがあり、ホンダ系のフォーミュラ・ドリームがあり、なおかつF4は存在した。時が経ち、FTもFDも、FCJに集約されるかたちで運営を終了したが、F4は今もそのまま継続している。何故か。
今は同じ内容のカテゴリーがふたつも同時に開催出来る時代ではないかもしれない。しかし、FCJがメーカー子飼いの十代の若手ドライバーにしかチャンスを与えないカテゴリーでしかないなら、逆にステップアップとは別の意味付けをしなければ、プライベーターでFCJに参戦することに意味は見出せない。今年4年目にしてFCJのエントリーが一気に27から18へと減少した原因はそこにある。
FCJを終了したドライバーがF4に乗るのは、単にほかに乗る場所がないから、という理由だけなのか。いや、少なくともFCJで経験することと、F4で経験出来ること、にはだいぶんな差がある筈だ。少なくとも、FCJのイコールコンディション、とは全く相容れないレースがそこにはある。

6