何時かレースに行くのを止めようと思う時がやってくるだろう。最近、そんなことばかりを考えていた。それは、レース自体に興味を失うからか、レースに嫌気がさすからなのかは判らないけれど。
それ程今年一年はストレスの溜まるレースが多かった。残念だけど。
だから逆に、日曜のもてぎFJマスターズが終わったとき、これが生涯の見納めでも満足だ、と本当に心の底から思った。これが今年最後のレースで良かった、このレースの次に、なにがあったとしても、kouraは当分観に行かなくても善い、そう思った。それくらい良いレースを見せてもらった、と思う。
もてぎで開催されるFJチャンピオン戦は、今年のFJマスターズで3回目になる。一年おきだから、最初に見たのは5年前。サーキットは一面雪に覆われていた。ファイナルでトップ3台がクラッシュして赤旗中断になった。2回めのマスターズもグリーン上は雪で白かった。序盤からコースインのストレートでコースサイドに激突リタイヤするマシンがあったりと、血気盛んで無茶苦茶だけど、元気なレース展開だった。
それはそれで面白い。だけど、FJはステップアップのための第一段階。言わばレース人生の始まりにそれはないぜ、ってな感じだった。
世間がどう考えようと、FJはレーサーのタマゴの試金石。ここでやってきたことが、将来を左右する。FJでダメな奴はレーサーにゃ向かない。最近は、経歴のスタートを他で始める奴が多いからよく判らない、なんて思ったりする。FJで目立たなくても、FTやFCJやF3に乗った途端に速くなる、そんなドライバーは居るかもしれない。それはそれで良い。でも、FJで身に付けなかったモラルは、何処にいっても何時になっても身に着かない。
レースのモラルは、センスと同じ、レース以前の道徳のようなもの。生きてく上で、やるべきこと、やってはいけないことを選択してゆく判断力は、その人生の始まりから周囲の環境のなかで、育つ間に刷り込まれ、形成される。そんな大切なものをFJは教えてくれる。
FJのレースを見ていて、どんなに速くても、どうしてそこで突っ込むか、と思う奴がいる。今、そこで突っ込まなくてどうすんだ、と思う奴もいる。いく戦かを経験して、行く時待つ時を覚えてゆく。そんな競り合いのなかで、間合いを覚え、戦略を覚えて、ライバルとの信頼関係が形成されてゆく。タイヤとタイヤが、ホイールがノーズが、ほんの一瞬掠めただけで挙動を乱すFJマシンだからこそ育つバランス感覚。身をもって体験体得して獲得するモラル。それに鈍感な奴は、どんなに速いモンスターマシンに乗っても大成しない。違うだろうか?
トップを走るには、それだけの理由がある。一度のレースでは見えないけれど、トーナメントになったとき、本当の強さ速さ確かさは見えてくる。脆さが露呈する。
今回のマスターズをみていて、やっぱりなぁ、と思ったことが幾つもあった。感慨深い。

0