静寂の入川本谷

2019/1/17 | 投稿者: クロちゃん

2006年4月8日 

 例年、4月の中旬頃に奥秩父の渓は突然爆発する。“爆発?”何とも物騒な言葉だが、ここで言う爆発は爆弾が爆発するのではなく、岩魚が釣れだすことを意味している。私の岩魚釣りは腕で釣るのではなく、場所及びその日の状況によって釣るのである。

『そろそろ、入川が爆発しそうだ。』と突如として思い込んだのは長年の経験と野生のカンであった。しかし、長年の経験はここ数年の自堕落した釣行に信憑性に乏しく、今の私の野生のカンは持ち合わせていないも同然であてにならない。
従って……。“飲むこと、食うこと、寝ること”の自堕落釣行に的を絞り作戦を立てた。しかし、釣ることも捨てがたい気持ちで朝一の入渓を目指して秩父を朝4時出発にした。

途中、大滝温泉のある道の駅で腹をすっきりさせて、朝5時入川観光釣り場手前の駐車スペースに到着。
自分達の他には車2台で渓流シーズンにしては寂しい数だ。いつもはこの時間ともなれば満車状態であるのに今日は車が少ない。これは今日の天気予報が多分に影響しているのだろう。昼頃から雷雨をともなって強い雨が降る大荒れの予報だ。私は天気情報を見ていないが、同行のキイくんはしっかり確認してきた。釣りに関してはプラス思考・楽天的な正確な私はいつも“どうにかなるべ。”と出掛けるのである。世間では「脳天気」とも表現されているようたが……。

「雨が降ってきたらすぐ戻ろうぜ。」
「そうっすね。雨の中の釣りはつらいですからね。」
事前の打ち合わせは完璧である。2人とも釣果はあまり気にしないのである。渓遊びが中心の“のんべぇおじさん”なのである。それでも、いつも心の奥には尺上の期待を秘めている釣り人であった。

ちょっと肌寒いが、明るくなりかけた林道をスタスタ歩いた。快調である。今日の入川本流の流れは水量豊かに絶好のポイントを形成しているように見えた。
「いつもより水量多いです。取水提で水取り込んでないのかな?」
「あっ、あそこなんて居そうだなあ」
釣り人の会話は川の状態のことが圧倒的に多い。
途中、休憩1度で一服して、汗も掻かないうちに赤沢谷出会いは6時10分に到着。

赤沢谷出会いで川虫捕りしたが、水は非常に冷たい。水温計を持たない私には何度か分からないが、これでは魚の活性は低いということが察知できる。私は川虫をあっという間にウジャウジャ捕るが、キイくんは苦戦しているようだ。川虫捕りも長年の経験と野生のカンなのだよ。

釣り始めてすぐにT氏が釣り落としたらしい。今シーズンの初ヒットとなるかと思われたが、相手の変化球にかわされた。
その後2人の竿に反応なし。静寂の渓は変化を見せない。川底には緑色の藻が密生していて滑りやすい状態にあった。滑って転んで水遊びしたら、とても冷たいだろうと慎重に徒渉した。
しかし、過去に入川本谷で藻が密生していた記憶はない。何かがおかしい。自然の時空が崩れかけているのか。

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8時前に雨がポツポツ降って来た。上流を見上げると、暗く重い雲が侵略している。
「昼頃からじゃなかったっけ?」
「山の天気は崩れるのが早いんだ。」
ここで雷雨になってはやばい。増水したら逃げ場がない。雲の状況からして上流は降っているかもしれない。深刻な状況判断の決断が迫られていた。

“岩魚は予知能力があり、大雨の前には小石を飲み込み岩の下や細い支流に逃げ込む習性があるらしい。”
どおりで釣れない訳だと勝手に決めつけた。これから大雨になるんだと自分に言い聞かせた。釣れない理由付けも完璧に出来上がった。
「やめます……。」と私。
「うん、そうしよう。」と即座に同意するT氏。
こうなると行動は早い。そそくさと竿をザックに仕舞い、今来た渓を駆け戻る。スタコラサッサだ。

ザーザー降りになる前に車に戻りたい一心で帰路を急いだ。
ところが……。
車に着く頃には陽射しが出て晴れてきた。

「雲行きからして、これから降ってくる。」
「あれ以上進んでも釣れなかったな。」
「昼頃から荒れる予報だから、これで良かったんだ。」
雨を望む2人だった。何とか撤退を正当化する2人であった。

それでも、車で戻る途中本降りの雨となった。
「やっぱり正解だった。釣りを続けていたら今頃ずぶ濡れだ。」
待望の雨に、自分達の行動が正しかったことを言い聞かせ大滝温泉に入った。

「晴れて、いい天気ですねー。」
大滝温泉から外へ出ると青空が広がっていた。

大雨はどこへ行った。岩魚の予知能力はどう説明するんだ。この時、釣れない理由は完膚なきまでに打ちのめされていた。



過去の記録ですが、このブログにできるだけホームページ「山遊びの貯金箱」の記事を移行して残そう作戦敢行中




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タグ: 山釣り 奥秩父 岩魚



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