武士の一分  新作レビュー

見た日/11月某日(試写会場にて) ★★★

 隙のない、計算され尽くしたプロの技が楽しめる。セットの出来、バランスの取れた脚本、役者たちの演技など、まさに完璧だ。

 山田洋次監督は、今では珍しい日本中誰もが知っている、木村拓哉という大スターを得て、彼を中心に、舞台のような映画を構築した、と思う。時勢はそのままに、役者の感情や役作りを大切にしながら、ひとつひとつのカットを丁寧に撮る。そういう意味では、この映画はスター映画なのだと思う。もし主役がキムタクではなかったら、多分、山田監督はセット中心の舞台のような映画にはせず、前二作のような作りにしたのではないか、と思う。

 聞けば、「殺意」や「蛍」に関するユーモアあふれるせりふは、木村拓哉の現場でのアドリブということだが、彼のテレビなどで見せる豊かな感性に、山田流の“映画的演出”が加わって、彼はこの映画独特の、自然流な存在感を見せてくれる。笹野高志や桃井かおり、山田組常連の赤塚昌人などベテラン勢もキムタクを上手く引き立てる。ヒロイン役の壇れいも露出度が少ないこともあってか、とっても新鮮だ。

 物語は正にシンプル・イズ・ベスト。さすがに山田監督は観客を楽しませる、という商業映画の基本を知り尽くしている。これまでの時代劇三部作のうちの二作「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」から分かりにくさ、無駄な部分を完全に排除し、スターを見にくる若い客から時代劇を見にくる熟年ファンまで、全てを網羅する映画を作り上げた、と言える。

 セリフや立ち振る舞いから物語性の「深さ」も感じられるだけに、ロケ部分が少ないだけに感じられる多少のシーンの違和感や、シンプル過ぎるがゆえに感じるかもしれない「今ひとつ感」をねじ伏せる力を持っている。

 ただし、凄いとは思うが、これは感性の問題であり、僕自身はこのシンプルなお話に“完全には乗れなかった”ので星は3つ。個人的には、この三部作では「隠し剣 鬼の爪」が一番好きだ。ストイックなキムタクもよいが、友情と藩との忠誠の間で揺れ動き、最後に爆発する永瀬正敏の方が感情移入できる。でも、これはあくまでも個人的な意見。

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2006/12/18  19:57

投稿者:melodie

おたっきー様

おたっきーさんの足元には遠く及ばないほど今までに見た映画の少ない私ですが、なんとなく感性に似たものを(好き嫌いって意味ですが)、勝手に感じてます。

おたっきーさんが「隠し剣」派で嬉しい!
まさにおたっきーさんの書かれた↓の文章にあの映画の魅力が!
映像もすっごく美しかったですよね。
特に雪のシーンが、心にしみました。
あの映画では最後にボロ泣きしちゃいました。

2006/12/18  2:14

投稿者:おたっきー

meiodieさま、コメントありがとうございます。

今回の「武士の一分」でも、無精髪(笑)は健在です!
それもキムタクで!

原作は未読なのですが、「隠し剣」いいですよね〜。

僕の周辺では圧倒的に「たそがれ」支持なのですが、「隠し剣」は永瀬君の佇まい、松たか子の上品さ、吉岡秀隆の自然さ、高島礼子の映画全体からは浮きまくっているお色気感、緒方拳の悪役ぶり、小澤征悦のぶっきらぼうぶり、みんなバラバラなんだけど、妙なエネルギーがあって、大好きなのです。

2006/12/14  21:48

投稿者:melodie

おたっきーさん、こんにちは。
私は実はまだ「武士の一分」は見ていないのですが、藤沢周平の前三作品は映画、原作ともに観ました(読みました)。
私もこの三作では(蝉しぐれは山田洋次監督ではないですが)私も「鬼の爪」が大好きです。月代に無精髪(髭もあったかも!?)の生えた永瀬正敏に泣きました。日本の美しさも見直しました。
「武士の一分」はちょっとどうかなあ〜と思ってたのですが、それはそれでいい映画ではあるようですね。ロードショー見逃したらDVD待ちます。

2006/12/10  7:16

投稿者:おたっきー

ペンシルスカート様、コメントありがとうございます。

「武士の一分」ですが、軽口を言うところなどは、正にテレビで見せてくれる、魅力的ないつものキムタクでした。そのほかのところでは、ご指摘の通り、がんばってはいるけれど、という感じで、確かに時代劇は無理があったのかも、ですね。

 確かに、「エンジン」や「HERO」などで見せてくれた演技、雰囲気を上手く大スクリーンで表現してくれる企画がほしいものですね。

 彼の映画は「君を忘れない」「2046」そして「武士の一分」となるわけですが、ペンシルスカートさんが指摘された魅力的な「ハニカミ笑顔」爆発の映画はないのが残念です。

2006/12/8  1:40

投稿者:ペンシルスカート

キムタクは・・・映画じゃなく、ドラマ(現代)で私たちミーハーを十分に楽しませてくれる。アップを多用したカメラワークに映し出されるハニカミ笑顔にキュンとくる。

無理して、映画、ましては時代劇に出なくても・・・と思ったのは私だけ??それとも、新境地を開こうとしたのか??

それにしても・・・笹野さん最高ですね。もう大ファンです。

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