どろろ  新作レビュー

見た日/1月某日 ★★★

うーむ・・・。正直、乗れなかった。面白いのは面白いのだけど。

百鬼丸にとって、失った身体を魔物から取り戻すことは、自分を取り戻すことであるはずだと思うのだが、その「成長」や「痛み」が今ひとつ、映画から伝わらない。

CGもアクションも頑張ってはいるが、どこか綺麗で、現実感がない。手塚治虫の原作世界を現代的にアレンジし、CGたっぷりのエンタテイメントにする、というアイデアは秀逸とは思うのに・・・。

オーストラリアでのロケも、自然の雄大さに比べ、作り物のセットの稚拙さや日本的な世界観とのギャップがやけに気になる。

・・・と思いながら映画は終盤に差し掛かったのだが、醍醐の城下に百鬼丸とどろろが辿り着いた辺りから、父と子の宿業、人が生きる意味など、多分作り手が伝えたいであろうメッセージが明確になって映画がグッと締まってきたように思う。

ここらへんが「カナリア」という秀作を生み、「黄泉がえり」「この胸いっぱいの愛を」などでも生者と死者との関わりを通し、スクリーンで一貫して生きる意味を問い掛けてきた塩田監督の真骨頂だろう。

そういう意味では全体を通して感じられた「今ひとつ感」が残念。もともと僕は、こういう空想エンタテイメント映画が死ぬほど大好きなはずなのに、なぜか昨年の「日本沈没」もこの「どろろ」も今ひとつだったのはなぜだろう。その昔、世評では最悪だった「さよならジュピター」も「惑星大戦争」も「ガンヘッド」もこよなく愛しているのに。

だが、その答えは、次にレビューを書くはずの「グエムル 漢江の怪物」を見てはっきりした。空想映画は、どんなに特撮がチャチであろうと、やはりドラマ、というか人間がしっかり描けてないと、感情移入できないのだ。

と書くと、「惑星大戦争」や「さよならジュピター」は人間をしっかり描いてないじゃないか、と言われそうだが、これらの作品群は、作り手の真面目さが、妙な味というか、不思議なヘタウマ的な魅力になっていた。そういう意味では、この「どろろ」などは妙な味を出すほどチャチではないし、かと言って深いドラマづくりにも少々失敗していて、結局、中途半端になっている。

アクションやCGはもちろん監督も関与して最終的にはOKしているのだろうが、全編を通して見ると、監督が描こうとしている世界観と乖離しているように見えるのだ。

とは言っても、こういう作品は日本の映画界にとって必要だ。エンタテイメントの宝庫とも言える手塚作品にチャレンジしたことも評価したい。個人的にはこれをきっかけに、他の手塚作品や、石ノ森章太郎ら、往年の作家の名作SFマンガの実写化をぜひ実現してほしい。

(そういえば、ハリウッドの映画会社が「サイボーグ009」など、石の森氏の作品映画化権を獲得した、というニュースをずいぶん前に見たが、どうなったのでしょう?)

あと、柴崎コウがとってもチャーミングで、原作の少女を大人にしたのは、柴崎コウの演技を見ると正解だった。ということで、本来なら星2つというところだが、プラス要素を入れて星3つ。
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