グエムル 漢江の怪物  DVD・ビデオレビュー

見た日/1月某日 ★★★★

いやあ、こんな映画に出会えるとは、怪獣映画が好きで本当によかった、と思う。

聞くところによると、肝心の怪獣のCGは全てハリウッドにおまかせだったらしいが、その姿勢も潔い。普通、こういう映画を作る場合、作り手は怪獣のスペクタルシーンに命を賭けるのだが、ポン・ジュノ監督は、怪獣そのものより怪獣出現によって起こる人間側のドラマに関心があるようで、そのドラマ部分が特撮部分の秀逸な部分も際立たせていて、実にすばらしい作品に仕上がっている。

この映画でスゴイのは、怪獣退治をするのが一般の、市井の人々、という点だ。冒頭で怪獣に娘をさらわれたことからその家族が立ち上がるのだが、とくに父親が本当にダメダメでだらしなく、ソン・ガンホが好演している。主人公たちはいわゆる低所得の底辺にいる層なのだが、その父親が娘を愛するあまり、軍隊や国家権力をものともせず、猪突猛進でつき進む様が実におかしく、そして感動を生む。

中盤のダラダラ感、辛らつな米軍の描き方、そして後半になっていい意味で予想を裏切る展開は実にサスペンスフル。バカだが憎めない主人公、説教臭く、家族想いだがどこか抜けている祖父、学生運動家だった主人公の弟、アーチェリー銅メダルの主人公の妹と、個性的なキャラクターが生き生きと描かれ、それぞれの得意技を駆使して怪獣に立ち向かっていくクライマックスは興奮する。

特撮も、前半で真昼間に怪獣が河川敷で大暴れし、人々をガンガン食いまくるシーンは特撮的に実に秀逸で、特撮映画史上に残る名シーンだと思う。

ユーモアがあって社会的、というのがポン・ジュノ監督の作品の特徴だが、前作の大傑作「殺人の追憶」とも共通点が多い。実際の殺人事件を元に描いた問題作の次が怪獣映画、というのも意表をついて面白いが、その内容が「怪獣映画でありながら社会的でユーモアたっぷり」という点は、前作の「実際の猟奇殺人事件を描いた映画ながらユーモアたっぷり」というところと同じで、ここに強い作家性を感じる。

ポン・ジュノ監督は今村昌平監督をこよなく敬愛しているらしく、今村作品の影響が強いということだが、聞くところによると、日本の取材陣から「今村監督が怪獣映画を撮ったらこういう作品になるでしょうね」と言われ、とっても嬉しかったそうだ。

キネマ旬報の2006年のベストテンでは、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」に続いて外国映画の3位に輝いたというから、堂々としたものである。外国映画とは言え、怪獣映画が玄人筋から評価されたことは嬉しい。これはかつて「風の谷のナウシカ」と平成「ガメラ」第一作がベストテンに入ったとき以来の快挙だと思う。

ということで、昨年の公開時、地元で公開されなかったとはいえ、劇場で見たかったなあ、と心から後悔したのでした。
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