東京タワー オカンとボクと、時々、オトン  新作レビュー

見た日/4月某日 ★★★★

 テレビドラマは全く見ておらず、原作も未読なままで鑑賞。原作者のリリー・フランキーさんの文章やイラスト、テレビのバラエティ番組でのコメントは結構注目していたので、そのキャラクターと映画で語られる物語とのギャップに驚いた。

 作者は1963年生まれというが、僕は1964年生まれで、僕も36歳のときに母親を亡くしている。多くの人が思うことだろうし、主演のオダギリジョーが「これは僕の物語でもあり、あなたの物語でもある」と言われたというが、その通りで、この映画で語られるエピソードの一つ一つは、自分のことにもあてはまり、少々痛い。

 劇中、母親の臨終の横で、締め切りが迫って仕方なく、おバカな文章を主人公が書かねばならない、というシーンがあって、これは痛かった。実は、僕も母親が危篤のとき、キャメロン・ディアス主演の「メリーに首ったけ」という映画の試写会をやっていた。病院に早く行きたい気持ちを抑えて、男の精子で髪型を整えるキャメロン・ディアスという、実におバカな映画を見ていた訳で、この辺りは共感できる。

 松岡監督が優れているのは、まさにこの点で、原作を美化することなく、一つ一つのエピソードを、じっくり、抑えた演出で淡々と描いた点だろう。母は聖母ではない。その実像を丁寧に描きながら、息子に無償の愛情を注ぐ、不器用な生き方をあぶり出していく。そして息子は、母親に悪いと思いながらも、世間に流されながら、放蕩していく。

 この親不孝な面をも、きちんと描いてみせるからこそ、後半、死期を迎えた母親への思いが重く、深く心を貫く。母親が死んだあとの描写も淡々と描くことで、ラストシーンの場面とセリフが印象に残る。

オダギリジョーは相変わらずうまい。「カーテンコール」の伊藤歩、「出口のない海」の平山広行が編集者のコンビ役で出ているのが印象に残った。

「バタアシ金魚」「きらきらひかる」「さよなら、クロ」など、日常に中の光る一瞬を切り取ることが秀逸な松岡監督だが、ここでまたいい作品を撮られたなあ、と思った。

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