バッテリー  新作レビュー

見た日/4月某日 ★★★

 こんなに野球が盛んなのに、意外と日本には「野球映画」のいいものが少ない。

 ずいぶん前の「野球狂の詩」も「ドカベン」も、岡本喜八監督の異色作「ダイマナイトどんどん」も、正直、野球のシーンはヘトヘトのトホホのホだった。

 そんな中でおっと思ったのは、真田広之がヤクルトスワローズの選手を演じたフジテレビ+東宝の「ヒーローインタビュー」で、映画自体はヘロヘロなところもあったが、試合シーンは結構頑張っていた。あと、途中からバースが出た時点で映画自体が破綻し、荒唐無稽に落ちぶれたものの、「ミスタールーキー」の試合シーン(とくに前半)もリアルだった。

 意外だったのは実写版「タッチ」で、この高校野球のシーンはよかった。野球シーンよりも、長澤まさみちゃん演じる南が球場に駆けつける走りの方が不自然なくらい、試合のシーンはきちんとしていた。原作のテイストを損なわない、犬堂一心監督の瑞々しい演出もよかった。

 さて、前置きが長くなったが、この「バッテリー」である。ずっと見たかったのだが、公開終了週にやっと見られた。滝田洋二郎監督はなかなか手堅いというか、娯楽映画を撮れる名手だなあ、と感心した。子役の使い方も上手だし、最後まで楽しめた。

 野球映画としても合格、どころか、この映画、もしかしたら日本の野球映画で初めて「野球」というスポーツの本質をついたものかもしれない。野球は、1人では勝てないスポーツだ。いくら天才的な投手がいても、打者が打てなければ勝てない。逆に天才的な打者1人がいても、投手が打たれれば試合には負けるし、大量得点はできない。

 しかし、チームワークがこれほど大切なスポーツにも関わらず、基本的には野球は「投手対打者」という、個人的な対決が機軸になっている。ここがまた、野球というスポーツの妙なのだが、この映画、この「妙」を実にうまく突いている。

 主人公・巧は中学生にして天才投手。だが、彼には身体の弱い弟がいて、母親からあまり愛情を注がれていない。彼は転校して豪という気の合うキャッチャーと出会うが、学校の野球部は監督が徹底した管理をしていて、自己主張する巧は先輩から嫌われている。そんな中、上級生の巧へのいじめが発覚し、野球部は大会出場を辞退してしまう。巧を育て、上級生に試合の場を確保したいと願う監督は、ライバル中学の四番打者と巧の対決を演出するが、大切なときに巧と豪の間に亀裂が入って・・・というのが物語の大体だ。

 主人公の天才投手、と設定したことで、野球の「チームワーク」と「個人競技」という両方の魅力と危うさが描かれ、それが中学生という発展途上の思春期ゆえに揺れる登場人物たちの成長物語にうまくつながっている。主人公の父親が語る、「野球はチームメイトにがんばってほしい、と思う祈りのスポーツ」という意味合いのセリフもよく、主人公の弟のエピソードもなかなか泣かせる。

 定番と言えば定番の展開なのだが、子役たちと大人の俳優のバランスもいい。この辺りも、滝田監督の手堅い演出が光る。中学野球の映画と言えば、あの不朽の名作「キャプテン」が実写映画化されたらしい。監督がアクション映画で定評の室賀厚と聞いてビックリだが、漫画「キャプテン」は、野球のゲームそのものが即ドラマの展開であり、それこそがこの漫画の魅力である。その魅力を映画でどこまで引き出しているのか、こちらも楽しみである。

 
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