『私は貝になりたい』リメイク  映画つれづれ

 テレビドラマの名作「私は貝になりたい」が映画化されるそうだ。

 フランキー堺が演じた主人公を、SMAPの中居君が演じる、というのにも驚いたのが、もともとの脚本を担当した橋本忍氏が再び脚本を担当し、今回のリメイクにあたって新たなシーンを書き加えた、という情報にも驚いた。

 橋本氏、伺えば89歳という。映画界には90歳を超えてなお、現役で活躍していらっしゃる新藤兼人監督もおられるが、今なお仕事をされるお姿はすごい、の一言だ。

 「私は貝になりたい」はテレビドラマの傑作、というイメージが強いが、実は放送翌年、同じフランキー堺の主演で映画化もされている。この映画版は橋本氏自身の監督で、確か、橋本氏の初監督作だったはずだ。今回のリメイクで再び脚本を担当するということは、橋本氏自身にとっても、思い入れが深い作品なのだろう。

 橋本氏と言えば、「羅生門」「七人の侍」など、一連の黒澤明作品の名作の数々を手がけられたこともちろんだが、これまでの大手配給会社主導による映画製作に異を唱え、自ら橋本プロダクションを設立。「砂の器」をはじめ、数々の傑作を世に送り出したことは、日本映画史に残る快挙だと思う。

 もう「砂の器」に関しては言うことはないだろう。一年かけた撮影、緻密な脚本、手に汗握る物語展開、ハンセン氏病の描写に見られる社会性、これらをサスペンス映画の枠で見せてくれた、文字通りの傑作だった。本当にそれまでの日本の娯楽映画の流れを変えたと言っていい。僕は小学5年生のとき、この映画を映画館で見て、卒倒しそうなぐらい感動した。野村芳太郎監督の名前も、このとき心に刻まれた。あと、個人的には、橋本脚本では駄作扱いされること多い「日本沈没」「八甲田山」も好きな作品だ。

 で・・・、橋本氏の脚本・監督作品で忘れられないのは、わずか公開1週間で打ち切られた、タイトル通りの幻の作品で、東宝創立50周年記念映画と銘打たれた「幻の湖」だ。この映画、同じ東宝の「ノストラダムスの大予言」、東映の「北京原人」と並ぶ、珍品というか、カルト作品の金字塔とも言える作品だった。この映画、映画館では「砂の器」とは別の意味で、卒倒しそうになった。

 雄琴のソープ嬢のヒロインの飼い犬が殺され、琵琶湖周辺で犯人を追いかけるうち、舞台が宇宙や戦国時代に代わり、クライマックスは犯人との大マラソン大会になる、という物凄いお話だった。物語に何の関連性もなく、スペースシャトルや落ち武者が出てくる展開は、まさに橋本氏の内面世界で、深い哲学性はあったのだろうが、ぶっ飛び過ぎてついていけなかった。

 当時、僕は高校生だったが、島根県で撮影もあったらしく、同じクラスの友人が平家の武者の役柄でエキストラ出演していた。友人は「撮影中、何の映画がさっぱりわからなかった」と言っていたが、実際に見ても何の映画かわからない、という作品だった。

 これ以降、橋本氏の脚本作品は伊藤麻衣子主演の「愛の陽炎」「旅路−村でいちばんの首吊りの木」ていどで、第一線から姿を消した。

 「愛の陽炎」は、バイクを操るヒロインが愛した男に騙されたと思い込み、何と丑の刻参りで藁人形を五寸釘で打ち込み、恨みを晴らそうとするこれまたスゴイ映画で、ちょっと「幻の湖」テイストを思わせた。しかし、当時、僕は伊藤麻衣子の熱烈なファンでおっかけだったこともあって、この映画も忘れられない。彼女の魅力を上手く引き出した作品でもあり、ホラー映画のテイストを持ちながらも、切ない青春映画の佳作でもあった。

 さて、今回の「私は貝に・・・」のリメイクだが、久しぶりの橋本氏の仕事がこの名作の銀幕復活作にどう反映されているのか、今から楽しみだ。でも、中居君のキャスティングは、どうなのだろう。一度、所ジョージ氏でリメイクされていることを考えても、コメディテイストのある起用、ということで言えば、志村けんさんとかいいと思うのだが。
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