大日本人  新作レビュー

見た日/6月某日 ★★★

松本人志監督第1作。事前試写を一切せず、どんな映画がまったく分からなかったが、そこまでされると情報が出てから見るのは嫌だったので、初日の初回に行った。

そして、その正体は、確かにオリジナリティにあふれた、「ヒーロー映画」「怪獣映画」だった。シニカルな笑いを全編に散りばめ、アメリカ批判、北朝鮮問題、幼児虐待など、社会的な要素も加えながら、ある面、日本のお家芸である「怪獣映画」を通して「日本人とは何か?」とも問いかける。

映画に「感動」や「泣ける」など過剰な「喜怒哀楽」を求めている人は、見事に裏切られる。「笑い」を求めている人に対してもそう。この映画にベタな笑いはない。あるのはニヤニヤ、クスクスの笑い。最後の最後はそれを昇華させ、プッと吹き出すような笑いはしっかり提供してくれるが。そういう意味では見事に「観客を選ぶ」映画。事実、ネットでは賛否両論真っ二つ。正直、僕は好きだけど。

松ちゃんの笑いの本質は、「照れ」と、それに隠された「毒」にあると思う。「ダウンタウンDX」でも、「ごっつええ感じ」でも、松ちゃんは若手芸人や一般芸能人の「マイナス部分」を、上手なタイミングで、一見申し訳なさそうに、本質をついた表現で攻撃してくる。

「そんないいたありませんけどね」などと、情けない顔をして照れながら、一瞬の間を置いて相手の弱い本質をズバっと突いて笑わせる。かつてのビートたけしはこの「弱さ」を間髪入れずに指摘していたが、照れながら、言い訳をしながら、それでも「弱さ」を突いてくる松ちゃんの笑いは、ともすれば「いじめを助長する」などとも言われながらも、その実は日本人の建前社会をぶち壊す「破壊の笑い」でもある。

そこには「照れ」はあっても、松ちゃん自体は謙遜などしていない、実は完全に相手を見下していて、その「正体」を巧みに「照れ」でごまかす。でもこのごまかし自体が彼の芸風で、その「ごまかし」の様子もおかしい。浜ちゃんや競演芸人にその「ごまかし」を突っ込まれたときの松ちゃんも実におかしい。

この映画は、そんな松ちゃんの「照れ」「ごまかし」「毒」が満載。松ちゃん1人の映画なので浜ちゃんのような突っ込みがないため、その笑いの世界に慣れてない人には少々きついかも。本来なら姿を現さないインタビュアーがその「突っ込み」の役割なのだが、そこはちょっと弱かったかもしれない。

映画自体は、日本的なヒーロー「大日本人」が、日本的な怪獣を倒す映画だが、そこには日本人の建前社会を「破壊」する、松ちゃんの真骨頂的なギャグと主張が展開される、快作に仕上がっている。

いろいろな意見はあろうが、新しい才能の誕生と、面白いものを見せてもらったことに素直に驚き、喜びたい。怪獣映画フリークとして言わせてもらうと、特撮はなかなか秀逸で、豪華ゲスト陣熱演のクリーチゃーのデザインもよかった。クライマックスの「実写」は、実にマニアック。僕は映画館でニヤニヤしてしまい、劇場を出る際、そのニヤニヤをスタッフのお姉さんに見られたのがちょっと恥ずかしかった。
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2007/7/8  5:53

投稿者:おたっきー

映画新人K子さま、コメントありがとうございました。

この映画、本当に賛否両論みたいですが、テレビのトークで見せる、彼独特の「世界」をきちんと「映画」にしていたのは、非凡な才能だな、と思いました。

「頭のなかをのぞいたようで結構楽しみました」ということですが、K子さまの感性もなかなか鋭い!こんな「頭のなかをのぞく」ような映画、欧米には割とあるのですが、松ちゃんという大メジャーな人がこういう映画を作ってヒットさせることも、映画界にとっては面白いことかな、と思います。

2007/7/4  17:55

投稿者:映画新人k子

初日、明かされない内容にそそられて見に行きました。『もうーまっちゃんったらぁ』と苦笑しながら見ましたよ。テレビの中のトークのまんまの映画でしたね。映画監督にもなれてしまうまっちゃんてすごいと思いました。まっちゃんの頭の中をのぞいたようで結構楽しみました。

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