見た日/7月某日 ★★★

松雪泰子がいい。彼女が薄汚い食堂で無口で働いているだけで、その「過去」が伝わる。

産婦人科病院から誘拐され、40日間経って見つかった新生児。17歳になった彼は、母親から愛されず、家庭内暴力を繰り返す。ある日、事件を知った彼は、「本当の母親」を求めて、かつて40日間過ごした女性が経営する沖縄の食堂を訪ねる。事実を隠して住み込みのアルバイトを始めた彼とその女性の間に、親子とも恋人ともつかない感情が漂う・・・。

こうストーリーを書くだけで、なかなか興味をそそる物語だな、と思う。

物語は割りとゆるやかなのだが、全編を覆うスリリングな雰囲気と、中盤からの意外な展開でグイグイひきつける。

前半の説明不足からか、かつて自分を誘拐した女性を訪ねる主人公の心情やヒロインの事件当時の心情が今ひとつ伝わらず、ちょっと感情移入しにくいところもあり、ラストの処理にもかなり不満が残るが、「ホワイトアウト」の若松節朗監督はこの題材がかなり気に入ったのだろう。丁寧に登場人物たちの気持ちの動きを撮りあげており、とくに松雪泰子の演技は秀逸で、監督と女優がいかにこの作品を練り上げたか、その入れ込みぶりが伝わる。

暴力的な夫を演じた寺島進も、いつものキャラクターではあるが、その粗野や感じはさすがで、映画をより緊張感あふれるものにしている。

寺島さんは「みすヾ」の現場を取材させていただいたときにお見かけしたが、自分の出番がないときも現場に来て本番を見守り、常に脚本を持ってチェックし、スタッフと演技について話し合っているその真摯な姿に感動したことがある。

この映画を見て、圧倒的な存在感を見せる寺島さんを見て、そのときのことを思い出した。


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