トランスフォーマー  新作レビュー

見た日/8月某日 ★★★

僕が映画館で映画を観る、という行動にはまったきっかけになった作品は、洋画はスティーブン・スピルバーグの「ジョーズ」で、日本映画は野村芳太郎監督の「砂の器」である。いずれも小学校の高学年のときで、僕の人生に大きな影響を与えてくれた。

この2本がなかったら、今の僕はなかった訳だ。スピルパーグ、野村両監督には今も感謝、感謝。実はつい最近まで、この2本の映画はまるで逆の映画だ、と思っていたのだが、優れた映画というものはあらゆる面で共通している、と思うようになった。

それは、やはり「人間、いわゆるキャラクターをきちんと描いているかどうか」ということだ。「ジョーズ」でも、巨大サメが夏のビーチに現れるパニックを描いていても、その騒動に翻弄される人間たちのドラマを描いているからこそ面白いのだ。どんな娯楽映画でも、本当に面白いものは社会性が優れていたり、人の本質をついているようなものが多い。

「ジョーズ」で言うと、サメ騒動が起きて犠牲者が出ても、市長は観光産業への影響を心配し、サメの出現を黙殺しようとする。そこには自然の脅威に対する人間の傲慢のようなものが感じられ、そんなテーマ性が実はこの映画を一本筋の通ったものにしている要因だったりする。登場人物のキャラクターも豊かだ。件の市長しかりだし、サメ退治の中心人物ながら実は海嫌いの警察署長(この人が主人公)、ちょっと早口でせっかちだが警察署長の右腕となる海洋学者、己のカンしか信じない、無骨な漁師と、サメを巡る多彩なキャラクターたちが鮮やかに描かれているからこそ、あの映画は傑作なのだと思う。

スピルバーグ監督は、娯楽映画もシリアスな映画も、キャラクターを描くことが天才的だからこそ、どの映画も魅力的なのだろう。「ミュンヘン」でテロの報復から己の手を血に染めて苦悩しゆく主人公と、仕方なくも市民の生命を守るため、嫌いな海と格闘しながら最後は一人で人食いサメに立ち向かう警察署長は、全く違うシュチュエーションながら、どこか共通点を感じる。

で、この映画である。この映画はスピルバーグ印だが、監督ではなく製作である。監督はあの名作「チーム・アメリカ ワールドポリス」で「マイケル・ベイのパール・ハーバーはクソ映画」と美しいミュージカルシーンで歌われた、あのマイケル・ベイである。どのていどまでスピルバーグが関与しているのか知らないが、全体の雰囲気やキャラクター設定、物語展開などはなかなか巧妙で「スピルバーグらしい」と思った。

とくに、世界で何が起きているか分からないまま、怒涛の展開でロボットを見せまくる、スピーディーな前半が出色。この辺りは「バッドボーイズ」「ザ・ロック」の頃のマイケル・ベイを彷彿とさせる。演出の切れもよく「アルマゲドン」以降、大味でどうしようもない大作映画を作っていたベイ監督の面目躍如である。「アルマゲドン」なんて、後半はギャグとしか思えない展開で、「パール・ハーバー」に至っては僕も正直、ク○映画、と思う。CGシーンはすごかったが。

後半は出来のいい「インディペンデイスデイ」のようになるし、ようやく原作アニメの「トランスフォーマー」らしい展開にもなる。残念ながら日本版の「コンボイ総司令官」という呼び名ではないが、ロボット同士の会話シーンはユーモアもあって原作アニメを彷彿とさせてくれる。まあハリウッド版「ゴジラ」のように、アメリカ軍がとっても強くてカッコよくて大活躍するのだが、戦闘機や戦車がロボットに変形する、空想の「玩具」と、本物の戦闘機や戦車がリアル感たっぷり、がっぷり四つに組んで戦闘するシーンは男の子なら胸がワクワクするだろう。

戦闘シーンのCGは本当に見事で、実際の兵器とロボットの区別がつかない出来栄えはスゴイの一言。ちょっと前まではどんな優秀なCGも何となく周囲の映像と雰囲気が違ってソレと分かっていたのだが、この作品はCGと実写部分を比べても、まったく映像上の違和感がない。DVDで注意深く見れば気づくかもしれないが、劇場で違和感がない、というのはすごい技術と思う。

肝心の人間ドラマ部分のキャラクターの描き方、という意味ではもうちょっと頑張ってほしかったが、ちょっと気弱でオタクな高校生が主人公で、彼の成長物語に仕上げている点は好ましい。ロボットとともに主人公の少年が成長する、というパターンは「鉄人28号」「マジンガーZ」から「エヴァンゲリオン」に至るまで、日本のロボットアニメの伝統なので、その辺りを踏襲しているのはよし、である。まあ、もともと日本の玩具が原作だし、スタッフはかなり「マクロス」「ガンダム」(とくにマクロス!)など、ロボットたちの動きは日本のアニメを参考にしているな、と思った。

ロボットが変身直後、見栄を切るシーンなどは明らかにこれまでのハリウッド映画にはなかった動きで、日本のアニメそのものの表現だ。もともと日本製の「トランスフォーマー」に敬意を表しているのか、主人公がロボットたちに「絶対あれは日本製だ」と言うところはおかしかった。

まー予算的には勝負しようもないが、これら優れたロボットたちはせっかくの日本生まれだし、何とか日本製特撮でこれに負けないロボット物が作れないかな、と特撮オタクとしては思ってしまう。アメリカで放映され、大人気の火付け役になったアニメ版の「トランスフォーマー」も初期版は日本の東映動画(現東映アニメーション)製なのだ。「ガンヘッド」以来の日本製本格巨大ロボット実写映画が見たい、と思うのは僕だけではないだろう。




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