人が人を愛するどうしようもなさ  DVD・ビデオレビュー

見た日/12月某日 ★★★★

石井隆監督という映画作家は、実に鮮烈な映像を追求する人だな、と思う。

そこに描かれるものは通常の日常生活に潜む狂気とエロス、そしてそこから起こりうる様々な事件によって堕落していく「人間」の業や本性のようなものだろう。

「天使のはらわた」シリーズはもちろん、最近では犯罪者たちが次第に破綻し、壊れていく「GONIN」や、良家の婦人がSMの世界に堕ちながら悦びを見出していく「花と蛇」など、石井監督の作品は一貫して色彩と光を使った独特な「映像美」が物語を彩っており、どれも人が本来持つであろう「狂気」をあぶり出していく。

石井監督が愛してやまない「名美」が主人公の作品としては久々となったこの映画も、冒頭から強烈なエロスシーンが登場するが、主演の喜多嶋舞が素晴らしく、夫への疑心から次第に精神のバランスを崩し、街娼として堕ちていく様が悲しくも美しい。そのヒロインが女優、という設定も絶妙で、現実と空想ともつかない、という物語の展開の妙を助けている。

役者で言うと、「カーテンコール」「樹の海」で抜群の存在感を見せ、「ガメラ〜小さき勇者たち」でいいお父さん、「仮面ライダーTHEFIRST」ではショッカーの怪人と、実に変幻自在な津田寛治氏が、この映画でもいい味を出している。

とにもかくにも、かつての日活ロマンポルノのように、エロスを追求し、「性」を映像として見せながらも、きちんと人の内面も描くような映画は、希少価値と言っていいだろう。

その手の作品を量産し、傑作もあったVシネマも最近はヤクザ物や金融物ばかりで、こういうエロス物でいいものは少ないだけに、この作品は貴重だ。

そもそも「性」とは人間は絶対に避けられない欲望であり、実は生きる根源でもある。

だからそんな「性」を扱う優れた文学や文化はあって当然だし、事実、そういった名作の小説や映画はたくさんあるが、ここ最近の日本映画はお子様向けの「泣ける」ものばかりで嫌になっちゃっているだけに、こういう堂々とした「ポルノ映画」が作られているのは、ある意味健全なことだと思う。
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