思い出に残る映画音楽2  映画つれづれ

「思い出に残る映画音楽」の日本映画編、後編です!

★津島利章on「仁義なき戦い」
津島氏は多くの映画作品を手がけているが、これが代表作だろう。東映のアクション映画の伴奏は、楽器編成などに非常にチープなものが多い。

恐らくほとんどが管楽器とリズムセクションが中心で、津島氏や「仮面ライダー」で知られる菊池俊輔氏など、一連の作品は「金がないならそれなりのもんやったるわい!」(なぜか大阪弁だ)という猥雑なパワーに満ち溢れていて、メロディーも耳に残る強烈なものが多い。

70年代東映アクションでは津島氏と菊池氏は双壁的な存在で「トラック野郎」では共作もしている。

作品を聞き比べると、ロックリズムをベースにしたシンプルなメロディーを得意とする菊池氏に対して、津島氏の作品はどちらかと言うとメロディー重視という印象を受けるが、この作品の音楽に関するインパクトは物凄いものがある。

とくにテーマ曲は強烈で、トランペットのがなるようなファンファーレ、ベースの唸るようなリズム、ホーンセクションのユニゾン攻撃と、映画の内容と同様、音楽にも「仁義」がない。

★宮川泰on「宇宙戦艦ヤマト」
歌謡曲の作曲家というイメージが強かった宮川氏が、あらゆる面で優れた作曲家という印象が強まったのは、恐らくこの作品が貢献している。

主題歌はもとより、数々の劇伴作品が素晴らしかった。川島和子の幻想的なスキャット、乗組員たちが乗り込む時の勇壮なマーチ、ヤマトが出撃するときの高揚感あふれるメロディー、主題歌を壮大にアレンジした楽曲…など、この作品がアニメブームを巻き起こした背景には、間違いなく優れた音楽があった、と言える。

とくに劇場公開されるに当たり、新たにオーケストラアレンジにして録音し、これが「交響組曲宇宙戦艦ヤマト」としてLP(!懐かしい)が発売されたことは当時、画期的だった。それからアニメ音楽の世界では「交響組曲」が大流行するのだ。

このときの「交響組曲」はオーケストラと言っても少々ポップス気味で、リズム楽器も入ったりしているのだが、ヤマトの音楽は、後に羽田健太郎氏のアレンジで本格的なシンフォニーにもなっていて、こちらの出来栄えも素晴らしい。

宮川氏のお葬式のとき、遺言によって息子さんの指揮で「ヤマト」を演奏した、というエピソードを新聞で読んだときは涙が出たが、羽田氏もその後亡くなっており、とっても寂しい。

ヤマトは著作権を巡る争いもあったりして、新劇場版の話が出ては消え、出ては消えの状態なのだが、是非、スクリーンであの素晴らしい音楽とともに宇宙に飛び立つヤマトの雄姿を見たいと思うのは僕だけではないだろう。

★菅野光亮on「砂の器」
映画「砂の器」の音楽監督は芥川也寸志氏だが、この作品を貫くピアノ協奏曲「宿命」は、菅野氏が作曲している。

この作品、今見るとツッコミ所もあるのだが、今だに何とも言えない魅力を放っている要因のひとつは、やはりこの「音楽」だ。

加藤剛扮する若手の新進気鋭の作曲家が、自らの不幸な「宿命」を呪い、断ち切れず、苦脳し、それでもこの曲によってそこから脱却し、のし上がろうとする…。こんな設定の「曲」を、実在のメロディーで表現しなければならなかったのだから、菅野氏のプレッシャーは相当すごかったと思う。

でも、菅野氏はその期待に応えている。抑揚が効いた、ダイナミックかつ物悲しいメロディーは、登場人物の悲哀と矛盾を十分に感じさせてくれる。

楽曲が素晴らしいからこそ、舞台袖で刑事の丹波哲郎と森田健作が話し合う「彼は今、自らの宿命と戦っている」というセリフが生き、日本の厳しい四季の風景の中、巡礼をする哀れな親子の姿が情感あふれるシーンとして表現される。

僕にとっても、日本映画で最初に毎日のように口ずさみ、リコーダーで吹くメロディーとなった。もっとも、小学校でこのメロディーを吹いていても、周囲の友達は「なにそれ?」という感じだったが。

★伊福部昭on「ゴジラVSキングギドラ」
伊福部昭氏って、本当に偉大な作曲家だ、と心から思い、尊敬する。
一般的には「ゴジラ」の作曲家としてのイメージが強いが、間違いなく、日本音楽界、日本クラシック界が世界に誇る作曲家である。

東京音楽大学の学長を務めたことでも知られているが、黛敏郎氏や芥川也寸志氏ら、名だたる作曲家の師匠でもある。

芥川氏の作品、例えばNHK大河ドラマ「赤穂浪士」のテーマ曲などを聞くと、印象的なリズムに「和」を感じさせるメロディーが被さる点など、伊福部氏の影響を色濃く受けているなあ、と思う。

「題名のない音楽会」で、司会をしていた黛氏が伊福部作品が演奏されたあと、感激で言葉を詰まらせたことも忘れられない。

伊福部氏はそれほど偉大な作曲家なのだ。

で、何が偉大かと言うと、作品のオリジナリティ、独創性にあると思う。伊福部氏の作品はメロディーやリズムが西洋音楽に影響されておらず、日本古来のリズムと和声を基調に、全く独自の展開をしていて、その独特感はまさにオンリーワンなのだ。

ドシラ、ドシラと繰り返される有名な「ゴジラ」のテーマ曲も、4分の4拍子と5分の4拍子を繰り返す変拍子で、普通の楽曲ではなかなかあり得ないリズムが平気で使われていて、それが全く不自然でない点に、伊福部作品の凄さがある。

そんな作品の独自性と幻想的な点が、怪獣映画、特撮映画の雰囲気にピッタリきていたのだろう。一般映画の担当も物凄くたくさんあるのだが、怪獣映画の音楽がとくに有名になった。

伊福部氏の場合、他で発表したシンフォニーをアレンジして映画音楽として使っている場合が多く、映画音楽=伊福部世界として楽しめる。

この「ゴジラVSキングギドラ」は平成に入ってからの作品だが、久しぶりに伊福部氏が全面にわたって音楽を担当しており、新録音というクオリティの高さから見ても、伊福部音楽の真髄が楽しめる。

伊福部作品は演奏が難しいのか、昔の作品を見ていると、時折、演奏ミスがあったりする。実際に劇伴では使われてないが、「ゴジラVSメカゴジラ」(ベビーゴジラが出る方ね)の公開時に発売された佐藤勝氏指揮によるライブCDは、せっかく佐藤氏指揮、伊福部氏作曲という夢の競演なのに、演奏したオーケストラが技術的にひどくて、ホーンセクションは高音でミスを連発するし、リズムも戸惑いながら演奏しているのが丸わかりのひどいものだった。そういう意味では平成シリーズの伊福部音楽は安心して聴ける。

一応シリーズの最終作となった「ゴジラVSデストロイア」も伊福部氏が全編を担当していて、レクイエムがたっぷり聴けるあっちもいいが、リズミカルで重厚なキングギドラのテーマ曲がいい「ゴジラVSキングギドラ」がオススメだ。

★たかしまあきひこon「野獣死すべし」
たかしま氏と言えば、「8時だよ!全員集合!」をはじめ、往年のバラエティ番組の作曲担当として知られる。恐らくあのコントの名曲の数々は、たかしま氏によるものだ。

映画音楽も何作か手がけていて、この「野獣死すべし」は最高である。

この映画、音楽がかなり重要なモチーフになっている。普段は狂気を隠し、翻訳家としてクラシックコンサートに現れる元ベトナム戦争の従軍カメラマン・伊達邦彦。彼は現代の平穏な東京に“戦い”を求め、銀行を襲う…。

内に狂気を秘めた松田優作氏の演技は壮絶かつ秀逸で、僕は高校時代、この映画に強烈な影響を受けた。映画全体を貫くモチーフになっている音楽は、ショパンのピアノ協奏曲第1番。このシンフォニーと、たかしま氏オリジナルのトランペットによるテーマ曲が、絶妙なバランスを取りながら映画が展開していく。

テーマ曲はジャズ・トランペッター、岡野等が名演を見せてくれていて、何とも言えない切なさとやるせなさが漂う、オリジナルのジャズ・バラード曲として聞いても名曲と思う。

僕はこのサントラ盤のLPレコードを買い、何度も何度も聞いた記憶がある。

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