ガチ☆ボーイ  新作レビュー

見た日/3月某日 ★★★★

若い!映画そのものが若い!監督も若い!(27歳!)実にストレートに、照れなくど真ん中を150キロのストレートで突いてくる青春映画。

そこには計算も迷いもない。「こう作ればお客さんが泣いてくれるのではないか」などというこざかしい意識もない。作りたい物語を、作る。そこから生まれるベタなので爽やか。

物語展開は、本当にベタベタの予定調和なのだが、作り手の意識がスッキリしているので、観客もここは素直に、その直球をど真ん中で受けてあげたい。

プロレス映画、というジャンルがあるならば、この作品はそのひとつに入るだろう。

プロレスは肉体を酷使するスポーツでありながら、「見せる=魅せる」という特殊なスポーツでもあるので、映画の題材にはなりやすいのか、邦洋問わず、いくつかの傑作がある。

プロレス映画でまず思い出すのは、「ロンゲスト・ヤード」のロバート・アルドリッチ監督によるアメリカ映画の「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)。女子プロレスのタッグチームが、冴えないが敏腕のマネージャーによってスターになる物語で、マネージャー役のピーター・フォークがいい味を出していた。

試合展開は日本の女子プロレスを参考にしていて、当時の全日本女子プロレスのスター、ミミ萩原も出演していた。

あと、シルベスター・スタローン初監督作「パラダイス・アレイ」(1978年)も忘れ難い。

1946年のニューヨークが舞台で、3人の貧しい兄弟のうちの1人が、家族のためプロレスで勝ち続けるお話。確か、テリー・ファンクJRが出ていたはず。脚本もスタローン、音楽もビル・コンティと「ロッキー」色満載だが、こちらもまた胸を熱くさせる一本。

あと、つい最近の作品だが、韓国映画の「力道山」も力作だった。力道山の知られざる一面を描いた秀作で、試合のシーンも日本の昭和のプロレスを上手く再現している。選手役で出演している故・橋本真也選手の雄姿が見られるのもうれしい。

日本映画にもいいものがある。「リング・リング・リング涙のチャンピオンベルト」(1993年)は故・工藤栄一監督作だが、物語全編に独特のユーモアや凄みが漂うのは、つか・こうへい氏の原作・脚本だからだろう。

主演の長与千種はこの映画をきっかけに復帰したし、本物感があふれていて、チャンピオンレスラーを演じた島田陽子は、これまでのイメージを根底から覆した。ほかにも「いかレスラー」なんて珍品から「お父さんのバックドロップ」など、いいプロレス映画は日本映画にも多い。

さて、この映画のポイントは、プロレスのほかに主人公が高次脳機能障害と設定した点にある。この主人公は新しいことを覚えることができず、一度眠ると前日のことは忘れている。だからこそ、主人公は自分の身体に記憶させ、生きる証としてプロレスに挑戦するのだが、ここは演じる佐藤隆太の魅力もあって、なかなか感動させてくれる。

この監督さんは、前作「タイヨウのうた」もそうだったが、実に眼差しが優しい。恐らくこの監督さん自身が、障害などに対して偏見がなく、ナチュラルに物事が見られる人なのだろう。

娯楽映画を作りながら、優しい眼差しを向ける大切さを声高にではなく、自然に訴えられることは、実はスゴイ技術だったりすると思う。そこもこの監督の「若さ」なのだろうが、その瑞々しさを失ってほしくない。

僕が抱える「発達障害」も(詳しくはリンク集からNHKハートネットに飛んでみてください)そうだが、なかなか外から見えにくいハンディを抱えていると、無理解から上手くいかないことも多い。
この映画では事実を知った学生プロレスの仲間たちが自然に受け入れてくれるのだが、その様がいい。自然と周囲が接する「ナチュラルサポート」が大切と言われるが、この映画の仲間たちは、実はサポートをしているようで、たくさんの大切なことを主人公から学んでいる。

その“支え合う”姿が何より美しく、そこにも作り手の優しさを感じる。
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