歓喜の歌  新作レビュー

見た日/4月某日 ★★★

事なかれ主義で、何でもいい加減な文化会館の主任さんが、名前がよく似たママさんコーラスの2つの団体をダブルブッキングしてしまい、その収集を図るというコメディ。

小林薫は、僕は日本の男優の中でもトップクラスの演技力を持っている人だと思っているが、この映画でもいい味を出している。脇の田中哲司、伊藤淳史、浅田美代子もいい。

コーラスグループのメンバーを演じる由紀さおりは、「家族ゲーム」以来スクリーンで見たが、相変わらずの存在感。もっと彼女を使う映画監督がいてもいい。安田成美も久しぶりだが、彼女は年齢を重ねてより美しさが際立ったと思う。

さて、原作は落語らしいが、ハリウッドのコメディにはない、日本人らしいクスリ、ニヤリとするコメディになっていて、テンポもよく、ひとつひとつのエピソードが楽しい。

ただ、騒ぎの収集の仕方や金魚を巡るエピソードはリアリティが全くなく、まあコメディだからいいか、と思わないでもないが、映画で現実の文化会館などでロケをしていると妙なリアル感が絵にみなぎるだけに、ちょっと物語の展開に違和感を覚える。

だが、その違和感こそがこの映画の魅力にもなっている。

「さよならクロ」や「東京タワー」の松岡錠司監督は絵のリアリティを大切にする監督と思うが、文化会館のホールやお寺の部屋、クリーニング屋の内部など、恐らくセットではなくロケだろうが、生き生きと映画の中で振る舞う登場人物たちの生活感がきちんと漂っている。

だからこそ、そんなリアルな感じとコミカルな展開が、不思議な空気感を生んで、この映画を魅力的なものにしている。

コーラスがこの映画のもうひとつの肝になっていて、俳優たちが本当に歌っていてなかなか感動させてはくれるが、「合唱」そのものよりは物語の妙の方に監督の意識は行っているので、先日の「うた魂♪」のような、コーラスに対するカタルシスはあまりない。

クライマックスの「歓喜の歌」も、女性コーラスとピアノ伴奏だけのはずが、いつの間にかオーケストラ伴奏と男声が入っていて、ずっと映画内のコーラスを感心して見ていただけに残念。

映画を盛り上げるための演出とすればアリなのだろうが、懸命に歌う現場での「歌」の力で物語を展開してほしかった、とは正直に思う。
0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ