明日への遺言  新作レビュー

見た日/4月某日 ★★★★

この映画の主人公で実在した岡田資中将を演じる藤田まことの演技は腹が座っていて、役者たちの気合の入った演技がいい。

改めて映画は脚本とキャスティング、そして役者たちの演技と演出だなあ、と思った。

名古屋への空襲で、パラシュートで脱出した米兵を処刑した罪で、岡田中将とその部下たちが戦争裁判にかけられる。

岡田中将は米兵を処刑した罪は部下にはなく、自分にあると罪を一身に認め、厳刑も覚悟したうえで、無差別爆撃だった空襲は国家間で取り決めた明らかな条約違反であり、その行為は犯罪であることを堂々と主張し、法廷に認めさせようと戦う。

ともすれば矛盾しているように思えてしまう岡田中将の主張を、きっちりと分かりやすく、栽判の進行に沿って見せてくれるので、岡田中将の信念や生き方が、観客の気持ちにもスウっと入り込んでくる。

ドイツ軍、日本軍、そして米軍が行った民間への空襲の経緯、第二次世界大戦の全体像などを冒頭部分にナレーションで説明し、そこから法廷場面へと続くので分かりやすい。ただし、ナレーションは感情の起伏がないのはいいのだが、ちょっと映画には合わない気がした。竹野内豊らしいが、他に誰かいなかったの?と思ってしまった。

実際の戦争シーンは、冒頭のドキュメンタリーフィルムのみ。あとはひたすら法廷シーンなのだが、小泉監督は、法廷でのやり取りや拘置所の内部の描写だけで、人間の心の奥に潜む憎しみや生命の尊厳をしっかりと描き出していく。

名古屋空襲での凄まじい様子は、弁護側の証人として出廷した蒼井優と田中好子演じる民間人の証言によって法廷で語られるが、これも映像がない分、証言だけで語られるのでかえって生々しく、胸に迫るし、この証言が割と映画の最初にあるからこそ、岡田中将の主張が胸に迫る。

映画はやがて岡田中将の主張から、岡田自身の生き方、家族との絆、彼の主張によって気持ちが少しずつ変化していく検事、判事の描写に重点が置かれていく。岡田と部下たちが風呂で歌う「ふるさと」が胸に迫る。

一人の人間の信念や行動が、どれだけ大事か。この映画はイデオロギーには関係なく、様々な状態で問われる人としての在り方、振る舞い方を問いかける。

最近、単純な「泣かせる」映画が多い。この作品は確かに感動するが、「泣ける」という単純なものではない。「本望である」という岡田中将の言葉を聞いたときに感じた感情は、何とも言えないものが胸にこみ上げた。これは、映画で感じてきた感情よりは、どちらかと言うと僕にとっては活字で感じてきた感動に近いものがある。

こんな想いが映画館でできる、これもまた映画の醍醐味であり、「映画」という表現媒体の可能性や奥の深さを改めて感じた。

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