スピードレーサー  新作レビュー

見た日/7月某日 ★★★★

映画を云々する前に、僕のタツノコプロダクションへの想いを綴りたい。幼いころ、タツノコプロのアニメは、明らかに東映動画などが作る他のアニメとは異質だった。

アメリカのポップカルチャーを思わせるモダンで無国籍な絵柄、スピード感ある演出、物語の雄大さなど、幼い僕の頭に、それは大きく響き、魂を震わせた。

ほとんどがオリジナル物だったが、原作物の「いなかっぺ大将」も絵柄は川崎のぼるの原画をなぞってはいるものの、どこかモダンで、タツノコらしさがにじみ出ていたように思う。「みなしごハッチ」もお話は浪花節なのに、これも色使いなどにモダンな感じがした。

最初にはまったのは、この映画の原作になっている「マッハGoGoGo」で、続いて「ハクション大魔王」のアナーキーさにぶっ飛んだ記憶がある。

で、「科学忍者隊ガッチャマン」「新造人間キャシャーン」「宇宙の騎士テッカマン」「破裏拳ポリマー」と続くのだが、「キャシャーン」や「テッカマン」は僕がSF大好きになるきっかけを作ってくれた作品であり、そのハードな設定と物語展開にはしびれた。「ポリマー」のポップさとギャグは今までの日本のアニメにはない乗りだった。

80年代に入ると、タツノコ独特の画風は収まっても、「未来警察ウラシマン」は本当に傑作で、ギャグ、アクション、SF設定いずれも1級品だった。「超時空要塞マクロス」もタツノコプロの製作だった。

そんな、独特な感性を持つ、日本の宝とも言えるタツノコアニメの代表作のひとつ「マッハGoGoGo」が、ハリウッドで映画化されるというニュースは、かなり前から聞いていたが、監督がウォシャウスキー兄弟で正式にGoが出た、と聞いたときはちょっと驚き、ニヤリとした。

普通の監督なら、自分の今の趣味を作り上げた作品を新たに作るとき、オリジナルの味を尊重しながらも、自分の「作品」に染め上げるものだ。これはいい、悪いとは別だと思うが、例えば紀里谷和明監督の「CASSHERN」は原作の「新造人間キャシャーン」のコンセプトを生かしながら、監督さん自身の感性を生かして別物に作り上げたものだったが、僕はこの“感性”は嫌いじゃなかった。

が、しかし、日本のアニメを「偏愛」しているウォシャウスキー兄弟なら、恐らくタツノコ魂爆発の、ちょっと変わった作品を作り上げるだろうと思っていたが、正に出来上がったものはそんな感じの作品に仕上がっていた。

物語自体は、「マッハGoGoGo」そのもので、一般の映画ファンに分かりやすいような物語展開ではあるが、フィルムの隅々、キャラクター造形の隋所にまで、「マッハGoGoGo」への偏愛で満ち満ちている。

この作品をリアルタイムで愛した人なら感動必至で、それも日本のオリジナルにかなりの敬意を表している。ラストでかかる主題歌に、40年前の日本版の主題歌、ボーカルショップが歌う、あの主題歌をサンプリングしていて、これで僕の涙腺は大爆発である。

この作品がアメリカに輸出された時、主題歌も同じメロディーで(実は英語の歌詞が乗りやすいようちょっとマイナーチェンジしてある)、僕と同世代くらいのアメリカ人なら、誰でも歌えるほど有名らしい。作曲は優れたアニメソングや童謡を多数作っている越部信義氏。「おもちゃのチャチャチャ」や「みなしごハッチ」もこの方の作曲だ。

今から15年ほど前、アメリカからやってきたAED(英語指導助手)と飲んだとき、日本のアニメの話になり、彼がいきなり「GoSpeedRacer! GoSpeedRacer!」と歌い出した時は、メロディーが日本版と一緒で驚いたことがある。喜んだ僕は彼と大合唱したのだが、そのとき一緒に飲んだ女の子は、音声多重放送状態の「マッハGoGoGo」にあきれていた。

それほど日本アニメがアメリカ文化に浸透しているのが驚きだが、これも国際的で質が高いアニメを作り続けてきたタツノコプロの先見性が評価されたものだろう。日本のアニメソングのレベルの高さも証明したと思うが、越部氏作曲の主題歌は今聞いてもポップで、とくに間奏のブラスセクションは心地よく、本当に名曲だと思う。↓

http://jp.youtube.com/watch?v=uyMaZ-CWrI4

で、オリジナルへの偏愛がすごいのは、主人公の食いしん坊の小さな弟、そのペットのチンパンジーまで一緒で、原作で展開される荒唐無稽なレースシーンや細かい設定、例えばガールフレンドが主人公たちと変わらないぐらいの運転の腕前だったり、ヘリコプターを平気で操縦したり、そんなところも「まんま」である。

あと、最もビックリしたのは、主人公のスピードレーサーがオリジナルの「三船剛」のファッションを踏襲し、オリジナル版のオープニングでする「決め」ポーズを劇中できちんとすることで、僕は映画館で1人飛び上がってしまった。

全体のポップカルチャー風の色彩も、物凄くサイケデリックで、これは原作アニメの色使いとは違うが、これは「そのまんま」と言うより、恐らくウォシャウスキー兄弟が幼い時に見たオリジナル版の残像記憶を、忠実に再現したものではないかと思う。

それでいて、レースシーンは流石に「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟。実写とCGを上手く組み合わせ、日本のアニメならではの大胆なカット割を生かしながら、斬新でめくるめくようなシーンを展開してくれる。このレースシーンを見るだけでも劇場に行く価値がある。

正に作り込みの世界で、ここまで徹底してくれれば文句はない。ここで「ふざけている」「CGのオンパレードで魅力がない」と思っちゃうと、もうこの世界にはいられないだろう。そういう意味では、観客を選ぶ映画かもしれない。アニメやポップカルチャーが苦手な人には、ちょっと二時間は耐えられないだろう。

まあ、そんなヲタクが大喜びする映画ではあるが、一般ファンも楽しめるよう作られてあるのは流石にハリウッド映画で、今年、最も楽しませてくれた映画の一本になった。

0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ