三本木農業高校、馬術部  新作レビュー

見た日/10月某日 ★★★★★

佐々部監督との出会いは、もう5年前になる。

まだ「チルソクの夏」の公開前、この映画を山口県全体で上映し、盛り上げたいという、イベントプロデューサーのMさんという方を介して出会った。

僕は一介の地元紙の記者だったが、監督の人柄と、映画への愛情にすっかり参ってしまい「チルソク」を応援しよう、と深く心に決めた。

果たしてどこまで成果があがったかは不明だが、市民団体を作って上映の応援をしたことは、僕にとっても「映画の応援」の原点になった。

Mさんの情熱に感動したことも大きい。Mさんは監督とは高校の同窓で、本来の仕事とは関係ないのに、「本当にいい映画なんです。この映画を、下関だけのものに終わらせたくない。これは山口県全体の宝なんです」と言うMさんに心を打たれた。

それで僕は、下関市、山口市、周南地区という県内の上映地を結び、東京公開に発信しようと「チルソク・サポーターズ・フラッグ」作成を提案させて頂き、旗にはスタッフ、キャストの他、映画に感動したたくさんの方の寄せ書きを頂いて東京の映画館に掲示した。

このフラッグについて、Mさんが「あれはよかったよね」と言って頂いたのが、感激だった。そのMさんが、「カーテンコール」の撮影中に病気で亡くなられた。お葬式に出席させて頂いたが、本当に信じられなかった。

「チルソク」「カーテンコール」に出演した山口放送の井上アナウンサー。以前から存じてはいたが、映画を通じて、親しくさせて頂いた。「カーテンコール」のときは、僕が企画したイベントにノーギャラで出演して頂き、佐々部映画について、熱く、本当に熱く語って頂いた。「佐々部さんの映画には、人と人との絆、本当に私たちが忘れてはならないものが詰まっている」そう力説されていた。

井上アナとも、不思議な縁があった。「四日間の奇蹟」のイベントの企画が、僕のフリーとしての初仕事だった。このときのパーティーでゲストとして演奏を依頼した演奏家が、井上アナの姪子さんであることがこのとき、分かった。

その演奏家さんもこれがきっかけですっかり佐々部ファンとなり、僕は今もお仕事を通して、素敵なおつきあいをさせて頂いている。井上アナの還暦のお祝いパーティーにはこの演奏家さんを通じて呼んで頂き、数日前に試写会で見たばかりの「出口のない海」についての感想で盛り上がったのだが、まさか、これが井上アナとの最後になるとは思いもしなかった…。

僕がこのお2人の話を書いたのは、この映画を見ている間、なぜか、お2人を思い出したからだ。

この映画、「チルソクの夏」以来の、高校生を描いた佐々部監督の作品である。豊かな自然の中で、馬の世話に明け暮れる高校生たちの姿が、淡々と描かれ、そこからジワジワと、生命の大切さという、大切な大切なテーマが静かに、かつ深く、伝わってくる。

僕は何だか、「チルソクの夏」という映画に携わった、僕の恩人でもあるお2人が、またまた素敵な映画の空間に導いて下さったような気がして、映画館の中で、1人、泣いていた。

そして、素朴さの中にも、力強さがあるこの映画は、昨年からの「夕凪の街 桜の国」「結婚しようよ」からまた踏み込んだ、佐々部映画の新しい境地でもあると思った。

こうして、佐々部監督の新作を、またまたスクリーンで見られる幸せ。「Mさん、井上さん、ありがとうございました。僕は、お2人のお陰で、佐々部監督の作品に出会うことができました」とぼくはスクリーンに向ってお礼を言った。

お2人への想いを新たにしながら、僕もまた、この映画のヒロインのように、未来に向って踏み出したい、と思った。「映画への夢」に、一歩近づくために。
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