舞台『黒部の太陽』  新作レビュー

見た日/10月5日 ★★★★★+∞

映画ではないけれど、レビューします。

待望の佐々部清監督初の舞台演出作品。初日の舞台を観劇するため、山口県佐々部応援団員の一員として、山口から大阪に駆け付け、鑑賞させて頂きました。

そんなにたくさんの舞台演劇の鑑賞数があるわけではないが、演劇でこんなに泣いたのは初めて。かつて、ある超有名演出家の著名舞台を見てガッカリした経験も持つが、今回は、僕が佐々部監督ファンということを差し引いても、文句なしの、素晴らしい舞台だった。

カーテンコールのときは号泣、号泣、また号泣。すっかり涙腺は黒部ダムの大放水状態のごとく、ぶち壊れてしまった。

映画監督の舞台演出、というのは最近多い。今回は石原プロが製作し、石原裕次郎氏の遺言でテレビ放映もビデオソフト化も封印している40年前の大作映画「黒部の太陽」の舞台化ということで、あえて映画的なスケールを求めて、佐々部監督にオファーされたのだろう。

監督は以前「映画監督である僕が演出するのだから、普通に『黒部の太陽』をやっても仕方ない」旨の発言をされていたが、完成した舞台版「黒部の太陽」は、舞台演劇でありながら「映画」への愛情と想いにあふれた、非常に優れたバックステージ物でもあった。

一幕は、東映、東宝、日活、松竹、大映という映画会社が、自社の製作体制を守るため、それぞれの会社所属の俳優は別会社の作品に出演させないという「五社協定」の壁にぶち当たりながら、「黒部の太陽」を製作しようという、石原裕次郎(当時は日活所属)と三船敏郎(当時は東宝所属)、熊井啓監督(当時は日活の社員監督)らの姿と、劇中劇として、史上最大の黒部ダムトンネル工事に挑む男たちの「黒部の太陽」の物語が劇中劇として進んでいく。

二幕になると、トンネル工事に賭ける男たちの物語が中心になるのだが、一幕で張られたさまざまな伏線が二幕で語られ、ここで生きてくる。

場面転換が通常の舞台より多いと感じたが、これは映画のカット割とよく似ている。しかし、それでいて、ひとつひとつの場面は、俳優さんたちのしっかりした演技と、よく練られた脚本、演出でかなり見せてくれる。

カットを積み重ね、見せ場では長回しのカットでじっくり芝居を見せる…。これは、正に「映画」である。他にも、渡哲也さんのあっと驚く映像出演シーンでの演出や、熊井啓監督が大放水シーンのときに撮影方法を説明する場面での演出など、舞台装置を使った演出も面白い。

滅多に見られない映画「黒部の太陽」のクライマックスシーンも見られるし、何より話題になった40トンの水を舞台上で放水するシーンは、本当に迫力満点で、手に汗握る。

それでも、全体を見渡すと、大放水シーンがかすむほど、強く印象に残るのは、俳優さんたちと佐々部監督が創り出した「ドラマ」の部分である。クライマックスに進むに従い、物語の熱は最高潮に達し、舞台装置と演技、演出が融合し、感動のラストシーンに至る。

バックステージ物としての真骨頂とも言えるラストは、もう涙なくしては見られない。僕は、これだけ感動的なバックステージ物は映画「蒲田行進曲」以来であり、あの感動もはるかに超えた。

ラスト近く、中村獅堂氏扮する石原裕次郎のセリフは、映画を愛するすべての人に向けた、佐々部監督の心からのメッセージだろう。「映画はいい」。この言葉に、僕は心の底から感動した。

監督の公式HP「ほろ酔い日記」によると、初日以降、手直しもされて、かなり場面によっては違うものになっているとか。ああ、千秋楽まで無理してでももう一度見たい、という衝動に駆られている、僕なのでした。

監督、素晴らしい舞台を、ありがとうございました!

未見の方、是非、梅田芸術劇場まで足を運んで観劇してください!!!26日まで上演しています。「映画」を愛する人にとって、必見の舞台です!!!
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2008/10/16  23:57

投稿者:おたっきー

MOTOさん、コメントありがとうございます。

「歴史的な時間に遭遇した」本当にそうなんでしょうね。

「黒部の太陽」を舞台化したとき、初日にいた…それは全世界で1900人しか味わってない、ということですものね。

その中の1人になれた、という事実は、のちのち重みと思い出となり、また感性の血肉になるかと思うと、僕も何打か嬉しいです。

2008/10/13  22:41

投稿者:MOTO

舞台の観劇から一週間が経ちますが未だその感動から抜け出せないほどの素晴らしい舞台でした

私も舞台を数えるほどしか見たことがありませんが歴史的な時間に遭遇したような衝撃が残っています

クライマックスになるつれておたっきーさんがご指摘のドラマが私の心に深く深く刻まれていき涙が止まりませんでした

そして最後のシーンで日本映画の素晴らしさを改めて私に教えて下さいました

このような素晴らしい舞台を見る機会を与えて下さった皆様に感謝でいっぱいです

昨日図書館で熊井啓監督の黒部の太陽の著書を見つけました

早速読んであのときの感動をまだまだ味わっていきたいと思います

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