まぼろしの邪馬台国  新作レビュー

見た日/11月某日 ★★★

この映画のことを知ったとき、当初「邪馬台国」そのもののお話で、吉永小百合が卑弥呼を演じるのかと思ったら、昭和30年代から40年代にかけて、邪馬台国研究に打ち込み、九州説を展開した著書で邪馬台国ブームを巻き起こした実在の文学者、宮崎康平氏とその妻・和子さんの物語だった。

まあ、でも、劇中のイメージシーンで、吉永小百合は卑弥呼を演じているけど…。小百合さんは和子役で、康平は、竹中直人。作品を選び抜いている小百合さんとしては珍しく、今年は年初めの「母べえ」に続いて、主演作が2本もあったことになる。

実在の人物像はともかく、この映画に出てくる「宮崎康平」なる人物はキョーレツな人物で、全盲で鉄道会社の社長にして歴史研究家ながら、金銭感覚に疎く、周囲にストレートに感情をぶつけ、破天荒に生きている、ちょっと迷惑な人。でも、それでいて情には厚く、愛すべき人であり、郷土への愛情と歴史への造詣は誰よりも深い。

そんな人物に一目ぼれされ、やがて人生をともにし、支え続ける和子夫人を、小百合さんは好演している。東映の「小百合映画」は、どうも旧知の仲で、俳優時代は共演経験もある岡田裕介社長に遠慮しているのか、「天国の大罪」や「玄海つれづれ節」など、面白いけれども珍品のような作品が多いのだが、この映画も、その路線キワキワながらも、夫婦愛を描いた、いい作品には仕上がっている。

竹中直人が好演で、こういうエキセントリックな人を演じさせたら、やはり竹中さんは抜群。恐らくアドリブも多いのだろうが、宮崎康平という奇人にして偉人というキャラクターを、完璧に表現していて、実に面白かった。

でも、作り手として「見せたい」のは小百合さんであって、本来、竹中さんは助演であるはずなのだが、映画は和子さんの少女時代から始まり、彼女の心情をメインにとらえようとはするものの、どうしても観客の関心と目は、「宮崎康平」に向く。まるで、台風の目のように。

だから、お話として中途半端になって感はいがめない。堤幸彦監督の演出はテンポがあって心地よく、自然の風景も実に美しいが、いいエピソードが続いて感動していると、いつの間にかおいてけぼりにされる感もある。作品の風情やテンポは僕が大好きな堤監督作品「包帯クラブ」「自虐の詩」に近く、好きな感じではあるが…。

だから、もう少し、「宮崎康平」についてのお話、例えばなぜ失明したのか、とか彼の若いころのエピソードなどが見たかった。邪馬台国についての考察も少し中途半端で、もう少し本格的な「邪馬台国論」を見たかった気がする。

こう書くとないものねだりのようだが、全体的にはバランスもよく、小百合さんの存在感は相変わらず抜群だし、面白い作品だった。CGで再現された昭和30年代の博多の風景もいい。ただ、話題づくりということもあったのだろうが、結構頑張っていた柳原加奈子はともかく、綾小路きみまろの起用はどうなんだろうか? 決して成功しているとは思えない。

あと、セリーヌ・ディオンの挿入歌も、かなりの予算をかけたのだろうが、作品全体の雰囲気に合っているかどうかと問われると、正直?な気もした。そこそこ頑張っているからこそ、いろいろと気になるのかもしれないが…。
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2008/12/20  21:17

投稿者:日本インターネット映画大賞

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