ワールド・オブ・ライズ 新作レビュー
見た日/1月某日 ★★★★
リドリー・スコット監督は、作風が少し変わったように思う。どんな物語も、ビジュアルで「見せること」にこだわっていたのが、前作「アメリカン・ギャングスター」もそうだったが、最近はドキュメンタリー的な見せ方にこだわっているような気がする。
それでも、アクションシーンなどの見せ方は流石で、息をつかせぬような、ピリピリした感じが漂うその場面では、計算され尽くしたカット割で見せてくれる。プロだなあ、と思う。
物語は中東でテロリストを追うCIAのスパイを描いたものだが、9・11を受けたイラク戦争以降、ある面、何でもありになっている中東の現実をしっかりと描きながら、娯楽作としてもいい仕上がりになっている。
最近のアメリカ映画は自国を自虐するというか、イラク戦争の反省を素直にするような映画が増えている。この映画も、CIAの作戦を最終的に肯定しているような感はあるが、アメリカが介入し、中東が混乱している現実を冷静に描いている。
アメリカ本国で子どもの送り迎えや妻との平穏な日々を送り、事務所では安穏と過ごしている上司のラッセル・クロウが非常とも言える指示を現場のレオナルド・ディカプリオ扮する工作員にする。
お互いに上司と部下でありながら信用はしておらず、ディカプリオはクロウに懐疑的ながら、現場で命がけの任務についている。クロウの肥満ぶりと、あまりに現場とかけ離れた次元であれやこれやと一国の根幹に関わるような指示を平気でする様が、非現実的でいて、実にリアルで恐ろしい。
物語は中盤からディカプリオがテロリストの親玉をおびき出すため、信じられないようなハッタリ大作戦を展開するのだが、ここからの物語は最近見たスパイ映画の中でもかなり上質で面白く、そしてスリリング。それでもヒリリと痛いのは、あくまでこの映画が中東の現実に根ざしているからだろう。
見るのにも力が必要だが、リアルと虚構の間をスレスレに描きながら、娯楽作の中にも時代性、社会性、そしてメッセージを取り入れた力作になっている。
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リドリー・スコット監督は、作風が少し変わったように思う。どんな物語も、ビジュアルで「見せること」にこだわっていたのが、前作「アメリカン・ギャングスター」もそうだったが、最近はドキュメンタリー的な見せ方にこだわっているような気がする。
それでも、アクションシーンなどの見せ方は流石で、息をつかせぬような、ピリピリした感じが漂うその場面では、計算され尽くしたカット割で見せてくれる。プロだなあ、と思う。
物語は中東でテロリストを追うCIAのスパイを描いたものだが、9・11を受けたイラク戦争以降、ある面、何でもありになっている中東の現実をしっかりと描きながら、娯楽作としてもいい仕上がりになっている。
最近のアメリカ映画は自国を自虐するというか、イラク戦争の反省を素直にするような映画が増えている。この映画も、CIAの作戦を最終的に肯定しているような感はあるが、アメリカが介入し、中東が混乱している現実を冷静に描いている。
アメリカ本国で子どもの送り迎えや妻との平穏な日々を送り、事務所では安穏と過ごしている上司のラッセル・クロウが非常とも言える指示を現場のレオナルド・ディカプリオ扮する工作員にする。
お互いに上司と部下でありながら信用はしておらず、ディカプリオはクロウに懐疑的ながら、現場で命がけの任務についている。クロウの肥満ぶりと、あまりに現場とかけ離れた次元であれやこれやと一国の根幹に関わるような指示を平気でする様が、非現実的でいて、実にリアルで恐ろしい。
物語は中盤からディカプリオがテロリストの親玉をおびき出すため、信じられないようなハッタリ大作戦を展開するのだが、ここからの物語は最近見たスパイ映画の中でもかなり上質で面白く、そしてスリリング。それでもヒリリと痛いのは、あくまでこの映画が中東の現実に根ざしているからだろう。
見るのにも力が必要だが、リアルと虚構の間をスレスレに描きながら、娯楽作の中にも時代性、社会性、そしてメッセージを取り入れた力作になっている。
